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「マルフォイって、ルシウスって…」


ロデオは信じられないといったような顔をしてドラコをじっと見つめた。確かに似てる、と言いながら彼に近寄る。そんなロデオの表情は嬉しそうだった。
自分の娘の恋人が、学生時代の親友の子どもだったなんて、喜ばないわけがない。



「そっか…ルシウスの。これからもレディーをよろしくな」

「もちろんです!信じてくれてありがとうございます」


ドラコは微笑んで頭を下げた。そんなドラコを見つめながらレディーはロデオへと笑顔を向けた。



「ねぇ、私は今幸せよお父様!そりゃ昔は違ったけど、今は友達とたくさん出来たし、ドラコもいる」

「ドラコはどんなやつ?」



ロデオは微笑みながらレディーに尋ねた。これまでの時間を埋めるように。その姿は本当の親子だ。



「たまにビビり。でも私を守るために最善を考えてくれる人…優しくて大好きな人よ」

「レディー…」

「なぁドラコ、レディーはどんな子だ?」


今度はドラコへと視線を向けた。娘のことを聞きたくてロデオはウキウキしている。ドラコはそうですね…と切り出したあとレディーの手を取った。



「すぐに無茶をする。おしゃれが大好きで、校則違反ばかり。勉強は出来るけど、真面目にやりたがらない。それに怒りっぽい」

「ははは!」

「ちょっとドラコ!」

「ほんとだ怒ってる」

「お父様!」

「でも…」


ドラコは今までのレディーを思い返していた。あなたの娘がどんな人か、いられなかった時間を教えてあげたい。


「本当は凄く優しいんです。友達思いだし、魔法の強さをけして自慢したりしない。全て人のためにしようとする。僕のときだってそうだ。危険を顧みずに探してくれた」


空気が静かになった気がした。こう改めて褒められると照れ臭いものだ。危険を顧みずって、ドラコだって私のためにそうしてくれたんじゃない。お互い様よ。なんて思いながら、少し涙が溢れそうで胸が熱くなった。



「…ありがとう。親がこんなのだから心配だったんだ。よかった君と会えて…」

「…あなたとサリアさんが出会ってくれてよかったです…」

「ありがとうドラコ。で、サリアは…俺のこと恨んでいたろ?」

「うん。すっごくね」


だよなと言いながらロデオはため息を吐いた。そんな彼を安心させるようにレディーは声を出して笑った。


「今は平気よ。それにお母様再婚したの。妹もいる」

「そっか、今幸せそうならよかった」

「でも」

「…?」

「でもね、まだお父様に恋をしてるわ」



悲しい人よね。と、レディーはまた涙を一筋流した。そんなレディーを見てロデオはそうだなと言って眉を寄せて笑う。

どうしようもない女。でもそれほど自分を好きでいてくれた人。会えるなら今会いたいが、そうもいかない。もうタイムリミットだ。



「時間だレディー」

「…わかった」


ロデオの足元が透けてきている。あと数分といったところか。


「そばにいてやれなくてごめん」

「もう謝らないで。お父様が充分苦労してきたってわかったもの。私のことを思ってくれてありがとう」

「いつでもお前のこと見てるから」

「私もいつでもお父様を思うわ」

「あとサリアに伝言を」

「?」

「…ごめんなって」



微笑んで頷く。ロデオは笑ってくれた。
もう涙は拭いて、笑顔で別れようと頬を上げる。

これまでずっと、父のことはわからないままだった。
いつ死んでしまったかも、いつマートルと知り合ったかも、日記のことも、何もかも。それが一瞬の、まるで夢のような時間のなかで彼を知ることが出来た。もうそれだけでよかったのだ。



「さよならお父様」

「じゃあなレディー」


ありがとう…ー。そう言いながらロデオは消えてしまった。静かな森にまた戻る。

ドラコはロデオの消えた森を見つめながら口を開く。



「蘇りの石はまだあるのになぜロデオさんは…」

「そうね…きっと全てを話し終えたからよ」



日記のことも
サリアのことも
自分自身のことも
私を愛している事実も…



レディーは蘇りの石をぎゅっと握った。こんなに満たされた気持ちになったのはいつぶりだろうか。生きていたら一番良かったけど、でももう十分だ。


「レディー?」


ドラコは視線を下に向けた。レディーが突然しゃがんだのだ。レディーは土を掘っていた。白い手を茶色く汚して、そんなことは気にもせずに。



「なぜ土を?」

「埋めるの」

「蘇りの石をか?」

「うん。ここに埋めたことは私たちだけの秘密。私たちだけで終わりにしましょう」



石を埋め、地面をポンポンと叩いた。立ち上がりふぅ!と息をつく。レディーは満点の笑顔でドラコへと顔を向けた。



「戻りましょ!ホグワーツへ!」



レディーは汚れた手のままドラコの手を掴んだ。城に向かって走る2人を、月だけが見つめていた。


(お父様ずっとそばにいてね)

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