法廷へと足を進めると、ハリーたちももう到着していた。ハーマイオニーがアンブリッジの近くで顔を強張らせている。
ハリーはもう杖を構えていた。アンブリッジがハリーを睨みつけている。
「あなたは嘘をついている」
「アルバート?」
「人は嘘をついてはいけない」
ヤックスリーが様子が変だと腰を上げた時、ハリーがアンブリッジに向かって失神呪文を唱えた。その隙にハーマイオニーが分霊箱であるロケットを奪った。
ヤックスリーがハリーを襲おうと杖を構えた瞬間に、レディーの呪文が彼に命中する。
「ステューピファイ!」
ヤックスリーはイスから落ちた。アンブリッジが気を失ったことにより天井の結界が取れ、ディメンターが大勢押し寄せてくる。
「逃げろ!!」
エレベーターまで全力で走り中に入ったがディメンターはしつこく追いかけてきた。怖すぎる。ただでさえ顔のない悪魔なのに、こんな軍隊になって押し寄せられたら震えるに決まってる。
ハリーとレディーは杖を構え同時に呪文を唱えた。
「「エクスペクト・パトローナム」」
大きな光がディメンターを弾き飛ばし、エレベーターは正常に動いた。
ハリーの変身はもう解かれている。人に見られ、気づかれたらおしまいだ。
「ハーマイオニーまで…」
「レディーもよ」
ハーマイオニーとレディーもポリジュース薬が切れていた。本当にまずいことになった。どうやってここから脱出しようか。
早い事煙突飛行ネットワークを使わなければ最悪殺される。
エレベーターがエントランスへと到着した。多くの人が賑わうエントランスだ。顔をうつむかせながら歩むしかない。
しかしロンが付いてこないのだ。一緒にいるレッジの奥さんがロンに熱いキスをしていた。
ハーマイオニーの口が塞がらない。
「あれ?ハリーポッターだ!!」
一人の男性が声を上げた瞬間、瞬く間にそこは地獄と化した。警備員が走り、レディー達を追いかけた。
ヤックスリーも目を覚ましたようで、相当怒りながら呪文を唱えていた。
「ステューピファイ!」
レディーの呪文をヤックスリーは相殺させた。
「小娘タダで済むと思うなよ」
ヤックスリーは完全に切れていた。今なら人1人くらい簡単に殺しそうだ。
ハリーとハーマイオニーが先陣切って走る中、レディーは飛び交う新聞に足を滑らせたロンをヤックスリーからかばっていた。
「行って!!」
ハリーたちは振り返らなかった。それでいい。彼らにはやることが多すぎる。無事に煙突飛行ネットワークに飛び込んだのを見届け、その場に倒れこんだ。
「小娘、お前は殺してやる」
レディーはヤックスリーに髪の毛を掴まれた。長い髪の毛が問答無用に引っ張られ痛みがレディーを襲う。
「っー」
「こんな痛みでは済まさんからな」
「おいおい待てよヤックスリー」
知らない声がその場に響いた。人さらいだ。チャラチャラした見た目の人さらいは、髪の毛を掴まれその場に吊るされるレディーの頬を触った。
「綺麗な顔じゃねぇか。殺すのはもったいねぇ」
「なんのつもりだスカビオール」
スカビオール。そう呼ばれた男は人さらいのリーダーのようだった。男にしては長い髪を伸ばし、レディーをジッと見つめている。
「服従させたら最高だと思うよ。この女俺に譲ってくれ。あそこに連れて行く」
「我が君はこんな女連れてこられても喜ばんぞ」
「我が君が気に入らなかったら俺が貰うよ。こんな女欲しかったんだ」
なぁお嬢ちゃん。そう言いながらスカビオールはレディーの頬を優しく撫でた。ヤックスリーが髪の毛を離すとレディーは床に叩きつけられる。
「ブロンドの髪に翡翠色の瞳。整った顔。美しい体。最高の女だなお嬢ちゃん」
「…」
「今夜俺の隣で眠ってみるかい?」
ゲスな台詞にレディーは吐き気がした。いっそ殺された方がましだ。隣で眠るとは無理矢理抱かれるということだろう。ドラコ以外の人となんて想像もできない。
震える体で立ち上がることもできない。掴まれていた頭が痛い。触られた頬が気持ちが悪い。助けて。ドラコ助けて。
スカビオールに腕を掴まれた。一瞬で景色が変わる。姿あらわしをしたようだ。
現れたのは薄暗い森の中。
どこかで見たことがある森だ。
レディーは、スカビオールの部下に両腕を掴まれ、目的の場所へと引きずられた。腕を振り払い逃げようとすると、部下の一人に腹部を殴られそのまま気を失ってしまった。
「おいおい。綺麗な女なんだ。丁重に扱えよ」
スカビオールの笑い声が森に響いた。気を失ったレディーは人さらいに担がれ森の中へと姿を消した。
助けてドラコ。
(私の声よどうか届いて)
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