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レディーはマルフォイに引っ張られた後、ようやく落ち着き、薬に使う鍋を嫌々ながら持ってきた。机にドスンと置くと、マルフォイは眉を寄せたあとレディーの表情を見て、鍋の中身を回す棒を持ち指しながら言った。


「おいっ!なんて不細工な顔してるんだ!それにもう少し優しく置いたらどうなんだ!」



不細工・・?
ああ、私のことか?このプラチナ男、今私を不細工と言ったのね。


「確かに私は美人じゃないけど、いきなり人の容姿をばかにしてくるあんたよりずっと美しいわ」



その場にいた全員が、そんなことあるかと心の中で大きなツッコミを入れた。皆、学年一の美女とまで言われているくせに何を言っているんだと言いたげである。マルフォイの照れ隠しで出る、思春期特有のツンツン発言などレディーには効きはしない。

二人が言い合いをしているとスネイプに怒られた。眉を寄せて教科書を手にポインターの棒をパシパシとぶつけている。
その後しばらく無言のまま作業を進めていたが、レディーのストレスは限界を迎えようとしていた。耐え切れなくなったレディーが叫ぼうとすると、意外なことにマルフォイの方が先に口を開いた。



「エジワール…そんなに僕と同じペアは嫌か?」



改まった質問にレディーはたじろいでしまった。今まで散々なことを言われてきたがこのような問いは初めてだったからだ。いつもの勝気な表情ば何処へやら、アイスブルーの瞳が、水面のように揺らいでいた。



「な…何よ…いきなり…」

「質問に応えろ」



鍋の中の薬品を見ながら言うマルフォイは、けしてレディーと顔を合わせようとはしなかった。前髪で隠れていて、マルフォイの表情が今はわからない。

そしてレディーは悩んだ。

こう改めて言われると厭味も言えず、言葉もない。ただ今思うことは、なんで今こんなことを聞くかだった。本心を言えば嫌ではないのだ。ただ彼とは普通の会話が出来ない。これは入学した時の喧嘩が原因なのだが、思えばマルフォイと普通の、友人としての会話をしたことがあっただろうか。会話もろくにないため不安で仕方なかったために避けていたのだが、目の前にいるプラチナの髪の彼があまりにも切なげで、レディーは何も言えなかった。だから「…別に…嫌なわけじゃない」と返事をすることしかできなかった。


マルフォイは「そうか…ならいい」とだけ言ってまた黙って薬品作りを再開した。



一体マルフォイは私に何を言わせたいのだろうか。疑問は私の頭の中でひたすらに飛び交っていた。


‐‐‐‐


「おかしい…」

「何が?」


順調に薬品を調合していたマルフォイは、急に口を開き顎に手を当てた。



「この薬は完成に近づくと何色になるかぐらい頭の悪いお前でもわかるだろう?」

「深緑よね…ってあんただって同じ学力じゃないの!!」

「そうだ。だが見てみろエジワール」



マルフォイが横に移動して鍋の中を見せた。レディーはそっと鍋を覗き込む。自然と開いた口に手を合わせて、目を点にした。


「まぁ綺麗なオレンジだこと」

「その喋り方はやめろ。まぁいい。そうなんだ、オレンジなんだ」

「これは失敗…?」

「恐らくな」


マルフォイがうつむく。しかしそんな様子はレディーには見えていなかった。



「何やってんのよバーカ!」



この罵声である。当たり前だがマルフォイは黙っていなかった。



「んだとこの出来損ない!お前はただ見ていただけだろうが!!」


マルフォイの意見はごもっともである。それもそのはず。マルフォイから僕のことが嫌いかどうか、の質問をされてからと言うものレディーは実験の最中ずっと上の空だったのだ。ほけーとしながらマルフォイを見ているだけで、実質やったことといえば機材運びのみだ。



「なんですって!!だってあんたがいかにも『僕は頭がいいから一人で出来るんです』ってオーラ出すから手を出せなかったのよ!」

「なんだそれは!!勝手なこと言って、いつ出したそんなもの!」

「さっきからずっとよ!」

「貴様ら…先程から何をしている…?」


「「あ゙・・・」」


二人の後ろには薬品を見て心底うんざりするスネイプがいた。鍋に入っていたかき混ぜ棒でオレンジ色の気味の悪い液体を混ぜる。


「授業を受ける気がないのかね?」


「違います違います、このバカが僕の邪魔をしたから」
「違います違います、このバカが私の邪魔をしたから」


見事なまでにハモる二人を、周りの生徒は感動しながら見ていた。まるで夫婦漫才だと言わんばかりにもっとやれーと言う輩までいる。ちなみに言ったのはウィーズリーだが。

スネイプは呆れて肩を落とした。

「真似しないでよ!」
「真似するなよ!」



しばらくその状態は続き、睨み合う二人を見ながらスネイプはついに口を開いた。


「貴様たちは居残りだ、せめて緑色にはしてこい。スリザリンの学生でこんなことをしていては、両親ともに、お嘆きになるだろうな」


「「え゙ー!?」」

「あんたのせいよマルフォイ!」

「それを言うのは僕の方だ!」


結局一時間はこの喧嘩で終わってしまった。想像通りの結果には苦笑いだ。誰がここまで完璧なシナリオを作ったのか聞きたいほど。


「なんか夫婦喧嘩してるみたいね」


クスクスと笑うオルガの隣で、ランドールはただ目を細めて黙って薬品を混ぜるだけだった。


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