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みんなが何度叫んで名前を呼んでも、レディーは出てこなかった。オルガは涙を流し縮こまってしまっている。マルフォイが外を見に行こうと店のドアに手をかけた時だった、ノットが血相を変えて勢いよく店に入ってきたのだ。


「ノット?」

「はぁ…はぁ…」

「どうしたそんなに急いで」

「ドラコ、ランドール見てないか!?」

「ランドール?」


オルガが顔をあげ、涙に濡れた顔のまま言い返した。


「グズッ、ここには来てないわよノット」

「そんなはず、確かにここに…。うわっ、酷い顔だなスターシップ」

「余計なお世話。今それどころじゃないのレディーが…レディー、レディーーー!!!!!」



またギャンギャンと泣きはじめたオルガにノットは何かあったのか?とマルフォイに尋ねた。


「エジワールがいなくなったんだ」

「エジワールが?」


マルフォイの横にずいっと現れたパンジーは続けて説明をした。


「いきなり黒い煙幕が店内を覆ったの、そしたらレディーだけ消えちゃったのよ!!」

「そういうわけだ、僕は外を探してくる」

「待ってマルフォイ、私も行くわ」


マルフォイが再び扉に手をかけようとすると涙を拭いてオルガは立ち上がった。頷くマルフォイとオルガが出て行き、他の生徒も外を探そうと店内を出て行った。


しかしノットだけがその場に立ち尽くしたのだ。


「ランドールは確かにここに入っていったはずだぞ…」


「いきなり黒い煙幕が店内を覆ったの、そしたらレディーだけ消えちゃったのよ!!」


黒い煙幕?
レディーだけ?


ノットは寒気がした。ゾンコでランドールが何を買っていたか思い出し全身に鳥肌が立つ。

そしてノットもマルフォイたちを追うように店内を出たのだ。



(早く伝えなきゃエジワールかなりやばい!)




‐‐‐‐‐‐



ホグズミードを隈なく捜してもいなかった。スリザリンの学生があまりにも必死に探していたので他の寮の生徒も手伝ってくれていたが、見つからなかったのだ。

どこに行ったのかとレディーの顔を思い出し再び泣きそうになるオルガは通りを歩くマクゴナガルを見つけた。


「先生!!」


三本の箒での出来事を事細やかに伝えるとマクゴナガルは少し焦りを帯びた顔をし、オルガに伝えた。


「…よくわかりました、ひとまず学校に戻りましょう」

「そんな!!レディーが!」

「落ち着きなさいMs.スターシップ、先生方が責任を持って捜します」

「…はい」



オルガがマクゴナガルに話している最中、マルフォイは近くの椅子に座って、頭の中をずっと駆け巡るレディーの叫び声に神経を集中させていた。



(エジワール・・・どこにいるんだ)



マルフォイを見つけたノットが周りに怪しまれないよう近づき後ろから話しかけた。


「なぁドラコ…」

「ノットか、なんだ?」

「あ、ランドール…のことで」

マルフォイは振り向きノットに顔を向けたが、表情から疲れが見て取れた。焦っている時の顔だが、少し殺気を感じる。

マルフォイからすれば今のランドールの話題は、「彼もいなくなった」くらいの軽いものだったのだ。

言ったら俺が殺されるかもしれない。そう思いながらもノットは気まずそうに、口をもごもごとさせてから言った。



「俺、ランドールと悪戯専門店『ゾンコ』に行ったんだ」

「…?」


マルフォイは訳がわからないといった表情に変わった。ノットは唾液をゴクリと飲み込む。


「あいつ煙幕玉…、買って…て」

「おい…それって」

「ひぃ!!許してくれマルフォイ!俺悪くないんだ!」


マルフォイの怖さで恐怖に怯えるノットに追いうちをかけるように胸ぐらを掴み、浴びせるように言い放った。



「ランドールはどこにいる!」

「だ、だから俺も探してるって言ったじゃないか!」

「チッ」


胸ぐら離され、ホッとしたノットは少し涙目になりながらも続ける。


「ふ、不安を煽るようで悪いんだけど…もう一つ買ってたものがあって…」

「僕に殺されないうちにさっさと言え」

「実は…」


ノットが話し終えるとマルフォイの目つきが変わっていた。アイスブルーの瞳は本当に凍り付くように冷めていたのだ。

もう一度胸ぐらを掴もうとするとノットは学習したのか後退りした。マルフォイはノットが後退する度に前に出る。



「ノット!!お前なんで止めなかった!?」

「まさか流石のあいつでも店内で煙幕使うなんて思わないじゃないか!!!」

「そっちじゃない!!」

「まだ使ってるとは限らないだろ!
それに愛の妙薬を使うなんてどうかしてるよ!!」

「クソ!!!」



マルフォイはホグワーツに向かって走り出していた。それを見たオルガは、マルフォイ!と名前を叫びながら着いてくる。


ランドールがゾンコで買っていたものは煙幕と愛の妙薬、つまり惚れ薬だったのだ。




マルフォイの頭をレディーの笑顔がよぎる。
思い返せば、あいつは確かにあの時僕に言っていた。


俺たちはスリザリンだ、滑稽なやり方でレディーを奪うのは気が引けるが…もしお前たちがそういう雰囲気になったら必ず奪い取るからな、何をしてでも





ランドールは動きだしていた。マルフォイの知らないところで、蛇のように狡猾に。




‐‐‐‐‐‐‐‐



ホグズミードから急いで帰り、焦って寮へと入る。マルフォイとオルガはその場で立ちすくんだ。二人の視界に広がったものは、レディーとランドールの強烈なキスシーンだったのだ。

何度も何度も舌を絡め合うキスを繰り返す。




オルガはあり得ないと口元を手で押さえ震え、壁にもたれかかった。
ランドールは二人に気づいたが、視線をマルフォイにだけ向けて言い放った。



「やれるものならやってみろか、案外簡単だな」



自分の舌を舐め、誰よりもスリザリンらしい笑みを込めてランドールは嘲笑いレディーへと語りかける。


「なぁ、レディー?」



(今でも声がする。助けてと叫ぶ彼女の声が)
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