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レディーとオルガが『三本の箒』に着くと、中にはマルフォイ達も来ていたようでプラチナブロンドの毛が見えた。

マダム・ロスメルタに名物のバタービールを頼んで、奥の席に座ってと指を指された。通路を通って奥に行こうと歩む途中

「エジワール、今までどこに行ってたんだ?」

と、マルフォイにいきなり話し掛けられて驚き、レディーは苦笑いをして奥へと逃げた。



「おい!!僕を無視するな!」

「マルフォイ落ち着いて、レディーはお菓子を買っただけよ」

無視されたマルフォイに、後から歩いてきたオルガは笑いながら解説した。


「お菓子?」

「そうよ、私たちハニーデュークスに行ってたの。さしずめマルフォイにお菓子を取られたくないのね」


お子様ね、とオルガが付け加える。
マルフォイが白い目を向けてレディーを見た、奥の席でお菓子を隠して座っているのが見える。
その行為がカンに障ったのか、マルフォイは杖を取り出して呪文を称えた。


「ウィンガーディアム・レビオーサ」(浮遊せよ)


レディーからお菓子は離れて宙を舞い、マルフォイの手の平へと落ちていく。飛んできたお菓子を掴むと見たことのあるパッケージに眉を寄せる。



「なんだ、カエルチョコじゃ…」

「返して!!」

「な゙!?馬鹿かお前!!」



鬼のように飛び掛かってきたレディーを、マルフォイは反射的に抱き留め、勢いのあまり背中から床に突っ込んでいった。
床に溜まっていたホコリが舞い上がりオルガ達の視界を奪ってしまった。床が割れるような音にその場にいた全員が視線を向ける。



「「ドラコォ!/レディー!」」


オルガとパンジーの声が響き渡ったが、長年溜まっていたホコリは舞い上がったままで、オルガやパンジーは目を擦っていたので、周りが何も見えずにいた。



「やった!取り返してやったわ!」



カエルチョコを取り返し、レディーは高らかな歓喜の声をあげた。


「ははは!この勝負私の勝…ち、ね?」


しかし喜びは長くは続かなかった。
レディーはマルフォイの体に跨がっていたのだ。マルフォイもレディーを受け止めようと体をつかんで支えており、床に寝っころがるように倒れていた。


息を詰まらせたレディーは今の状況に赤面し、言葉を失ってしまった。

カエルチョコを見ていた目を開かせ、赤面した顔のままギコギコとロボットのようにマルフォイへと視線を移した。

「…」

「…バーカ」



顔を背けてバカと言うマルフォイの頬は赤く見え、抱き留める腕に力が入ったのがわかった。

だから尚更赤くなってしまう。

早く退かなくては、と思ったレディーがマルフォイから離れようとするが、マルフォイがレディーの服を掴んだ。


「え…?」

「…」


ホコリが落ちて姿がはっきりし始め、二人のシルエットが明確に見えるようになった瞬間だった。黒い煙幕が周りを覆った。



「今度は何!?」

「真っ黒じゃない!ゴホゴホ!」


オルガとパンジーを始め『三本の箒』にいた人、全てが影響を受けた。みな黒い煙幕に驚き息を吸わないよう口を押さえている。



異変が起き、倒れた状態から立ち上がったレディーとマルフォイもまた驚いていた。視界を奪われて何も見えず混乱が続く。


「な、なにこれ」

「わからない、クソ!誰がやったんだ」

「何なの…」

「エジワール、僕から離れるな」



マルフォイがレディーの手を取ろうとしたが、感触がない。ついさっきまで話していたレディーはそこにはいなかったのだ。



「え、エジワール…?おい、どこだ…!?」




やがて煙幕は消えたがレディーはどこにもいなかった。焦るオルガとマルフォイの目が合い、非常にまずい状況ということはわかった。



「マルフォイ!レディーはどこ!?」



オルガが駆け寄りマルフォイの服を掴み、親友の名前を叫んだ。


「わからないんだ、一瞬で消えた」

「煙幕を使ってレディーを誘拐したんだわ…きっとそうよ!!!」



不安で倒れ込むオルガを前にするマルフォイもまた、レディーのことで頭がいっぱいだった。






(マルフォイ…!)




頭の中でエジワールの叫び声が何度も聞こえてきて、僕は思わず頭を抱えた。




(ずっと僕が抱きしめていればよかったんだ)


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