『ふう…大体こんなもんか。』
部屋の大半を占めていたダンボールは無くなり、その代わりに生活に必要最低限の物が棚などに収納してある。
先程取り付けたゴシック風の時計に目をやると6時を指していた。
黙々と作業を続けていたせいで、あっという間だったように感じる。
『腹減ったし、ラウンジで飯でも食べっかなー。』
ラウンジの場所はさっき行ったから覚えてる。
そう言えば、妖館の設備とか全然知らないな。
夜にでも回ってみるか。
††††
『─────なんで?』
飯を食いにきたのに、未だ俺はラウンジに入れずにいた。
その理由は─────。
「ひーたん〜☆」
『ぐはっ…いきなり来んな残夏っ!お前も此処で働いてるとか、聞いてねぇぞ!』
そう、こいつがいたから。
軽く睨みながら、抱きついてきた残夏から身を剥がそうとする。
くっそ……いい歳した大人が体重かけやがって…。
重いんだよ、潰れるだろうが。
「ひーたんったら暫く会わない内に冷たくなっちゃって、昔なんか「寂しいよ」って泣いt『うわぁああぁあっやめろっ!これ以上人のトラウマに触れんなぁっ!』─こっわ〜いっ☆」
あぁ、一発殴ってやりたい…。
こいつを雇った奴が可哀想でならない。
絶対胃潰瘍やら何やらの精神病にかかってんだろ。
同情するわ。
「 やだな〜。ただ、ちょっぴりおせっかいなだけだよ〜。精神病なんて大袈裟な。」
ケラケラと軽く笑ってるが、本当に精神病にかかってそうで怖くなってきた。
「そもそも渡狸だし。」
『そっかー渡狸なんだー…って渡狸!?今、渡狸って言った!?』
残夏の肩を掴み、荒く問うと「うん。渡狸卍里」とテンパる俺をよそに、先ほどと同じように軽く笑いながら答えた。
「ちなみに1号室だからいつでも会いに来て〜☆」
『卍里は兎も角、おまえの所にはぜってー行かねえよ。』
…ってことは、ちよと、れん、卍里で3部屋埋まってるわけで…俺は5号室。となると4号室が空いている。
この流れからすると知り合いの可能性が…いや、でもそんな奇跡的なこと絶対有り得ない。有り得ないんだ。
バンッ!!
『――っっ!?』
「あっれ〜?帰ってくるの早かったね〜」
大きな音を立てて扉が開かれた。
そこにはマントを羽織り、仮面(?)をしたロン毛の変態が立っていた。
「帰ったぞ我が肉便器ども!!」
「お帰り〜かげたん」
嘘だ。誰か…嘘だと言ってくれ…。
「おぉ、其処にいるのは氷雨か?久しいな!お前にはこれをやろう!土産だ!」
ガサゴソと大きな紙袋の中から出された(俺にとっては)ゴミを持たされたが、数分間全く動けなかった。
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