妖狐×僕SS 雨月物語 | ナノ


巡り会い  






繋がりが広いんだか  

世界が狭いんだか わからない

けど、再び巡り会えたことは嬉しいこと

これは"奇跡"なのか  それとも"運命"なのか

今の俺には、解るはずもない─────。







†††††







荷物は事前に運んで置いてある。となると今日は荷物の整理をして終わるだろう。


自分の部屋は確か5号室。上の階だ。

エレベーターが何処にあるかわからないので、適当に廊下を進む。


すると話し声がかすかに聞こえてきた。

ちょうどよかった、挨拶も兼ねてエレベーターの場所を聞こう。
足を進めると、広間についた。


案の定ここの住人らしき人が4人。

メゾン・ド・章樫にはSS[シークレットサービス]
…つまりボディーガード付らしく、殆どの住人はそのSSを付けている。

まぁ、俺はSSを付けることを断ったけど。


きっとスーツを着ている2人はSSだろう。



『あの、お食事中すみません。新しく引っ越してきた……え………。』


繋がれた言葉は途切れ、表情は驚いたものに変わる。

それに気付いた他の面々がこちらを向き、そのうちの2人は俺と同じ様な反応を見せた。


『れん!ちよ!それにそうまで!』


まさか知り合いに会えるとは思っていなかった。
しかも3人も。

「氷雨じゃん。久しぶりー。」
「氷雨なのか?偶然だな。君も此処に住むのか?」


あんなに小さかった2人は、大きくなってて違和感を覚えた。

まあ、そう思うのは当たり前で、最後に会ったのは多分2年以上も前。しかも成長期の真っ盛り。

『ちよ可愛くなったな〜。れんもイケメンになっちゃって。ってかさ、れん、お前俺よりデカくね?』


「氷雨も美人に磨きがかかったよな〜。氷雨が女だったら間違いなく惚れてたわ〜。」

『美人って言われても嬉くねぇよ。それより3年振り?ぐらいだよな。本当久し振り。』


2人と出会ったのは中学校3年のとき、同じ先祖返りと言うことで結構一緒にいることが多かった。


「確か君は今年から大学生か?」

『ああ、此処から近いんだ。そんでもって今日から此処でお世話になるわ、改めてよろしく。』


「ふん、よろしく。とでも言っておこうか。」
「おー。よろしく。」

ちよの悪態も健在のようだ。
れんも前と変わらず無気力とゆうか…。
2人ともあまり変わっていないようで、安心からか
ふ、と笑みが漏れた。


『そうも久し振り。』

「お久しぶりです。ご無沙汰しております。氷雨さん。」


相変わらず愛想がないな、昔とぜんぜん変わってない。
一切変化無い作り笑いにムッとする。

ここまで表情が変わらないとなると、こいつには感情が無いのかと疑問に思えてくる。


『…その格好、SSやってるのか。』

「はい、僭越ながら凛々蝶様のSSをやらせて頂いております。…ところで、氷雨さんは凛々蝶様と親しいようですが…どういった御関係でしょうか?」

そうは昔から節操なしだと思っていた。
何事にも執着心が無く、いつも表情一つ変えない。
何を考えているか全くわからない人。

そんなそうがちよに依存しているとは。

『昔、一緒の中学だったんだ。』

そう説明すると、納得したようで「さようですか」と言い下がった。

「と言うか、君は御狐神と知り合いなのか?」
「あーそれ俺も気になってた。」

知り合い…知り合いと言うよりも、結構一緒に遊んだ仲だから友人の方が近いと思う。

『んーまあね。友達。』

「意外だわー」
「確かに。」

まあ、歳も離れてるし性格も性格だしな。意外っちゃあ意外か。

『ん、そちらの方は?』

綺麗な髪の女性に視線を向けると、手元にある雑誌がチラッと見えた。
今までファッション雑誌かと思っていたが、表紙のタイトルには"女体"と書かれていた。

見なかった事にしよう。

『初めまして、此処の5号室に引っ越してきた、赤楝蛇 氷雨と言います。七歩蛇の先祖返りです。これからお世話になります。』

手を差し出すと、少しの間見つめて手を握り返してくれた。

「雪小路 野ばら。反ノ塚のSSよ。よろしく。」
『宜しくお願いします。』

趣味はちょっとアレだけどいい人みたいだ。

他の住人も野ばらさんみたいな人だったら良いのにな。
だけど世の中そんなに甘くはないだろう。


『あっ、と…なあ、エレベーターってどこにあんの?』

危うくエレベーターの場所を聞きそびれるところだった。

「エレベーターなら、そっちの扉を出て、真っ直ぐ行ったところにある。」

『サンキュー。んじゃ、そろそろ部屋行くわ。また後でなー。』

「おーす。」



ラウンジにいた3人と別れ、部屋へと向かう。


『他の住人はどんな人達なのかなー』


そんな事を呟きながら。






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