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私はシャチくんにお礼をすることにした。
でも彼が何をして欲しいのか、何が欲しいのか分からない…。



『シャチくん』

「あ? 何さ?」

『お礼、何がいい?』



普通率直に聞くものじゃないよね…そう思ったけど取り消しできないし。
取りあえず、返答を待とうと思ってたら直ぐ返ってきた。



「何でもいい」

『何でもって…欲しい物とかやって欲しい事とかないの?』

「んー…特に無い。っつか俺の欲しい物とかやって欲しい事とかお前には無理な事とか多いし」

『例えばどんなの?』

「そうだなー…部屋の掃除とかー」

『遠慮します』

「早ッ」



だってシャチくんの部屋汚いの知ってるから。
もうゴミ置き場かと思ったよ。というと、ゴミ置き場はねぇだろと頭を叩かれた。



「でも何でもいいんだろ? じゃそれでいいじゃん」

『それはオマケで』

「何だよオマケって」

『やっぱり気持ちも大事だけど形の方がいいかなーって』

「でも欲しいもんねぇし」

『………確かに』



うーん、どうしよう…。悩んでいると、花屋が目に入った。
…あ、そうだ。思いつきでもいいかな。



『シャチくん、花屋入ってもいい?』

「別にいいけど」



了承を貰ったところで、シャチくんと一緒に花屋へと入った。
花屋は色んな花の香りと色に包まれていた。
まぁ、それが普通なんだけど…あんまり入ることないしね。



「何か欲しい物でもあんの?」



シャチくんにそう聞かれ、特にはないけど、と答えた。
ふーんと興味なさげに花を見る彼。色んな所に目を行き届かせている。
私は目当ての花を探すことにした。



『(あるかなー…)』

「何の花をお探しですか、お客様」



店員さんに声をかけられ反射的に構えてしまった。
そして焦りながら花の名前を言えば、畏まりましたと奥へと消えていった。
ふぅと小さく息をつくと不思議そうにシャチくんに見られた。
そして暫くしてから店員さんが花を持って戻ってきた。



「これで宜しいですか?」

『はい』

「ではお会計の方に…」



外で待っててとシャチくんに伝えて、レジへと行く。
会計をしていると、店員さんが彼氏さんですか?と楽しそうに聞いてきたので違いますっ、と即答した。
それでも店員さんは笑ってそうですか、と答えた。
話してるうちに終わったみたいで、手渡された植木鉢は綺麗にラッピングされていた。
お礼を言って店を出るとシャチくんが壁に寄りかかって待っていた。



「ナマエ遅かったじゃん」

『少し話してたから』

「綺麗に包まれてんなー」

『まぁそうだね。って事で、はい』

「は? 何よ?」



ラッピングされた花を渡したら、驚いたような表情をされた。
シャチくんに花って…似合…う?わない?



『お礼』

「ナマエ…俺、絶対植物枯らすと思うんだけど」

『いいよ、それでも。それは形だから』

「やっぱ言ってることが訳わかんねぇ」

『いつもの事だよ』



そういって笑えば、「サンキュ」と言葉が返ってきた。



『どうでもいいかもしれないけど、その花はスノードロップって言うの。別名、待雪草』

「へー」

『それで、花言葉は『希望』』



シャチくんにはピッタリかもね、と言えば、どーいう意味だよと言われた。
笑って誤魔化せばしつこくなったので走って逃げた。
でもやっぱり追いかけてくる。こうして船まで鬼ごっこで帰った。



花を貴方に
(貴方に希望が訪れますようにと願って)





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