■
U
ナマエは自室のベットの上に体育座りをして、声を押し殺して泣いた。
大切なペンダントが壊れたのが悲しかった。
ナマエはもう二度と開くことは無いんだと思えば思うほど涙が止まらなかった。
あれからどれ程の時間が経ったのか分からなかった。
けど、窓から見える空は橙色に染まっていたので夕方だと気づいた。
『っ…』
ナマエの怒りは治まることを知らないみたいで。
自室に籠ってからずっとシャチを憎んでいた。でも、それと同時に自分への怒りも沸々と沸きあがる。
気を付けていればこんな事にはならなかった。シャチくんを悪く言いすぎた自分にも責任がある。
悔めば悔むほど、涙は行き場を失うことはなく、寧ろ溢れ続ける一方で。
きっと目が真っ赤何だろうな、と思って情けなくなる。
『ははっ…』
泣き過ぎた所為か、頭がボーっとする。そして知らない内にナマエは眠りに着いた…。
コンコンッと言うノックでナマエは目が覚めた。
有無を問わず、鍵をかけた筈なのに部屋に入って来たのは船長であるトラファルガー・ロー。
手には夕飯かと思われる物がある。
『せんちょ…今、何時ですか?』
「8時くらいだ。それよりもナマエ、目真っ赤だぞ」
『ぁ……』
ナマエは手元にあった鏡で自分の顔を見る。
大分赤みは引いてはいるが、残っていると言えば残っている。
それよりも自分の疲れきっている顔の方が嫌だ。
ローは夕食を机に置いて、ベットに腰掛ける。
「夕飯食いにこねぇから、コックが心配してた」
『だから、持って来たんですね』
「あぁ。アイツを怒らせんのはご免だからな」
『…』
確かにとは思ったが、あえて口には出さなかったナマエ。ローは一つ溜息をついてナマエの頭を撫でた。
何も聞かず、何も言わずにこうしてくれるのはナマエにとってとても有難かった。気づけば、またナマエは泣いていた。
シャチ視点
どうしよう。
ただそれだけが頭の中をぐるぐると回っていた。ナマエと喧嘩して泣かすことはよくある。
だが今回は別だ。ナマエの大事な物を壊してしまった。これでは暫く、まともに口も聞いて貰えないかもしれない…。
俺は何度目かの溜息を付きながら、トボトボと宛てなく船室を歩く。
「…酷い顔だな」
「ペンギン」
廊下で壁に寄りかかっていたのは、ペンギン。帽子で顔の表情は読み取れない。
「また喧嘩か?」
「ペン…どうしよ、俺…」
いつもと様子がおかしいことに気づいたペン。
俺の落ち込み具合を見て、相当なものと取ったかな…
でも、それほど俺は気力という気力が無くなっていたかもしれない。
「何があった」
「ナマエのペンダント…」
「あぁ、あの命より大事な。…壊したのか」
「痛いトコつくね」
力なく笑えば、ペンは溜息をついた。俺の方が溜息をつきたいよと思った。
「喧嘩してたら、やっちゃった」
「やっちゃったじゃないだろ。どうするんだ?」
「俺もう無理………暫く口もきいて貰えないようになる」
「口だけじゃないだろ。目も合わせてくれなくなるぞ」
「う…」
わかっちゃいたけど、こうあっさり言われると、心にグサッと来る。
まぁきっとペンは分かってやってるんだろうけど…。
「謝ったのか?」
「、まだ…」
「シャチ…」
呆れたような表情をされてしまった。普通そうだよな…。
でも謝れなかったのはしょうがない。
だってあの場から逃げられてしまったし、泣いてたから。
なんて、いい訳かもしれないけど。
それでも、仲間との間に亀裂が入るのは胸が裂けるくらい痛いんだ。
遠い距離(会いたくても会えない)