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　そうそれは、誰もが思いだしたくもないあの出会いの日…。彼女の凶暴さは現にその日から恐れられ、思い知る事となった日…。



恐ろしい思い出



　入学式翌日。普通に、そう至って普通に遅刻登校してきた名前は何事も無いかのように教室の扉を開ける。勿論、それはクラス全員からの視線を一気に浴びてましてや教師の視線が一番痛い。

『…おはよーございます』
「いや、遠野。お前初日から遅刻とかいい度胸だなオイ」
『バスに乗り遅れました』
「最早言いわけでもないんだな。うん、まずは生徒指導室から行こうか」
『大丈夫です、もう校長室に行ってます』
「それ大丈夫なの!?」

　担任の見事なツッコミっぷりも凄いが、一切悪びれもしない名前もどうかとクラスメイト達は思う。ましてや金持ち学校に１割くらいしかいない凡人が堂々遅刻なので生徒からの第一印象は最悪だ。

『先生、わたしの席どこ』
「あーもう、話を聞け！お前みたいに初日から遅刻してきた生徒はロクでもなく育つ、」
『うっさい、黙れ』

　そういって彼女は一瞬にして担任にラリアットを仕掛けた。そして隙なくキャメルクラッチを仕掛ける。その様子に一同は唖然とする。

『あははは、先生あまりつべこべ言わずとも。何も初日の遅刻者はわたしだけじゃないんですから』
「ギブギブギブギブ！　つかなんでこんなプロレス技できるわけ!?」
『あー、小学生時代に兄に毎日のように仕掛けられてまして』
「どんな家庭で育ったの君!!?」

　あはは、と笑って技を仕掛けたままの名前を、口をあんぐり開けて見ていたのは彼女の隣の席の人間――向日岳人。流石にこんな技を見せられたのでは、席替えどころかクラス替えさえして欲しいと入学早々思い、自分は１年生きていられるのだろうかと先の不安を呆然と彼女を見ながら考えていた。



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『へー、珍しい名前だね』
「えっ……」

　突然話しかけられた向日は吃驚したように目を大きく見開いて彼女の方に首を向けた。彼女はというと至って普通でにこにこと笑っている。

『岳人って名前なんでしょ』
「お、おう」
『良い名前だね、ご両親が考えてくれたの？』
「た、多分…」

　ビクビクと挙動不審の向日はいつ自分にプロレス技がかけられるのだろうかと恐れていた。だが彼女は一向に表情を崩すことも無く話しかけてくる。

「あーっとお前、は…？」
『遠野名前。好きに呼んでよ。あ、がっくんて呼んでもいい？』
「が、がっくん…？」
『ん、呼びやすい。がっくんはこの学校で一番目の友達だね』

　と嬉嬉として語る彼女に向日は少しだけ不安が消える。そして「じゃあ…名前」と呼べば名前は「うん」と笑う。

『がっくん何部入るの？』
「テニス部！ここのテニス部メチャクチャ強えーんだぜ！」
『そういや不良みたいな部長さんいたもんね』
「だけど跡部が倒しちまったからなー…」
『ああ…昨日の、』

　そういって名前は顔を顰めた。どうやら跡部は苦手というより嫌いの範囲の人間らしい。

『がっくんもレギュラー目指してんの？』
「勿論だろ！んでレギュラーなって全国優勝すんだよ!!」
『へー…頑張ってね』
「おう。お前は、何部入るの？」
『未定。委員会には入りたいと思うけど』
「委員会？」
『うん、図書委員とか』
「意外。つか似合わねー」

　ココで自分が何を言ったかまだ理解していない向日は、この１秒後後悔した。瞬時に世界が反転して体中に激痛が走る。

「ぎゃああああああ!!」
『うんうん、良く言われるよ。不良が図書委員だなんてねーでもオカッパ赤髪チビ少年がテニスやるって言った時はホント吃驚したっていうかー、うん赤髪不良がテニス部とかねー運動部に入る意味ーって』
「痛い痛い痛い痛い!!ちょ、ギブギブ!!無理名前死ぬ!!」
『え？　わたしは死なないよー、何言ってんのがっくーん？』
「いぎゃあああああああああああ!!」

　容赦なくサソリ固めを仕掛けてきた名前に向日はバンバンと床を叩くがどうやら収まる気配はない。クラスメイト達は憐みの視線を向日に向けるだけで誰も助けに入る事は出来なかった。



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「いやー、今となってはもう恐怖の始まりっていうか、アンビリバボーっていうか」
「お前…苦労したんやな、岳人」

　うんうんと妙にしみじみとした昔を懐かしむ会話をしている向日と忍足。項垂れる向日の頭を忍足は目頭を押さえながら撫でている。

「侑士…お前も気をつけろよー。いつ犠牲になるかなんて人間分かんねぇよ」
「せやな。俺も気をつけなアカンなー」
『何二人で話してんの、作戦会議？』
「そうそ。遠野には気をつけよういう話…」

　その瞬間、忍足向日両者とも音を立てて固まった。そして声の主の方へとゆっくりと顔を向ければそこには満面の笑みで迎える名前が。

『さて、二人とも何をお望みで？』

　悲痛な叫び声が上がったのは、それから約５秒後のことであった。



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一番最初に関わった（可哀想な）テニス部員がっくん。

11/11/13

暴れん坊な遠野妹が氷帝でわちゃわちゃ�A