『さて…今日は仕事貰いに行こうか!』
「えっ……」
『え、雷蓮なにその顔。不満でもある?』
「いや…お前が仕事に乗り気とか、明日は台風でも来るかなと…
酷い使役神だね

 名前は小さく笑って、「翆輝、庵、行くよー」と声をかければ彼らは既に準備万端。名前は「やる気満々だねー」と楽しそうにいって部屋を後にする。



■  □  ■




『東王公様ー』

 名前が宮の中を歩いていると、都合よく名前は東王公である香茗を見つけて手を振る。すると彼も名前に気がついたようで血相を変えてその場から名前に向かって走ってくる。走った後からは宮中とは思えないほど土煙、砂埃が舞い上がり何とも言えない漫画風な一場面が出来上がっていた。そして香茗はがばっと名前に抱きつくときつく締めあげた。

「名前ー、会いたかったわー」
『お、お久しゅう、ござ、います…東王公様…』
「あらやだ。香茗さんって呼んでって言ったでしょ?」
『はい…その、通り、でした…』
「香茗殿、名前が死ぬ。きつく抱きすぎだ」
「あ…ほんとだわ。ありがと庵。ごめんねぇ名前」
『いえ、死なずに済んだので平気です』

 へらり、と名前が笑えば香茗もにこりと微笑んだ。そしてお茶を出すと言った香茗の後ろについていけば、池のほとりに連れて来られた。女仙たちが菓子やら茶やらをせっせと運ぶ中、香茗と名前は椅子に座った。

「暫く会っていないかしら。どれくらい?」
『んー…そうですねぇ…3ヶ月くらいは』
「あら、もうそんなに立つの? 早いわねぇ」
『あはは。香茗さんの女装も変わらず「あら、何か言ったかしら?」…いいえ、なにも』

 香茗のドドドというバック音のつきそうな表情に、名前は血相を変えてお茶を啜った。それには背後に控える使役神たちもなんとも言えない表情をしている。香茗は相変わらずニコニコと笑っているが…。

「それで…今日は何をしに?」
『ああ…西王母様に仕事貰いに来たんです』
「あら、珍しいわね。名前が乗り気とか」
『外国は嫌いじゃないんですよ。ただ行くのが面倒くさいだけでして…』
「面倒くさがりな名前らしいわね」

 そういって苦笑した香茗に今度は名前が笑って見せた。名前が重要な内容以外は滅多に自分からは外国に行かない。気が向いた時か、旅行気分のどちらかで外国に行くくらいだ。そして外国に行って返ってくると、丸2日は床から出ることはない。

「そういえば、珠龍が仕事あるとかないとかって言っていたわねぇ…」
『ないと困りますね。最近は食費も底をついてきたところですから』
「なら、私から珠龍に行っておくわ」
『それは非常に助かります。ではまた今度西王母様へ伺う事にしますよ』
「そう。それじゃあ、今日は私とお茶していきなさいな」
『ええ、そうさせて頂きます』

 そういって名前は随分と長い間香茗と話をしていたのだった。

とある歌士官の日常B



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