掌編小説 | ナノ


▼第五十五夜 「金縛り」

オレが影真似の術を教えられ始めたときのこと。
本当言うと、親父がはぐらかすから、自分でもよく分かってねぇんだけどよ。

夜中に、金縛りに遭うことがあった。
いきなり身体を押しつけられている感覚が強くなって、息が出来ねーほど苦しくなる。
それはほんの数分の出来事だったとは思うんだが、やたら恐ろしく感じた。

翌日、親にそのことを伝えると、親父はしばらく考えたふうだった。
それからオレがかなり怖がってんのに気がついて、いきなりプッと吹き出すんだ。

それは影首縛りの術だ。

そう言って、親父は影を伸ばしてきた。
影真似とは違う。
確かに身体を這い上がってくる影の圧力は、金縛りと近いものがあったが…。

お前が修行にいい加減に取り組むから、ちょっと怖がらせてやっただけだ。
なんて言ってやがったけど。

――だったらなんで、その日の夜から寝る場所が変えられたんだ?

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