掌編小説 | ナノ


▼第五十四夜 「洞窟の守り人」

危ないから、絶対に外には出るな!

そう叫ばれたのは、真夜中のことだった。
里の隅にある演習場の洞窟の中。
オレはその時まだガキで、下忍になる前に同期の何人かを誘って野営に行っていた。
突然の声に、眠りに落ちかけていた奴らも一斉に目を覚ましたようだった。
なんだなんだと騒ぎが始まる。

外は土砂降りで、怪しげな物音は聞こえなかったが、本当に外は危険なのだろうか。
訝しがる仲間が現れ、だんだんと冷静になって状況を確認すると、どうもおかしなことに気づく。

オレたちに注意をした声は、まるで耳元で聞こえたようだった。
そう、全員が感じていた。
…全員の耳元で、一斉に注意をした?

あり得ない。
そしてあり得ないことついでに、誰かが洞窟の入り口を指さす。

あんなに耳元で声が聞こえたはずなのに、足跡がまったくないのはおかしい。
外は土砂降りだってのに、どうやってオレたちに近づいたんだ。

そっからはもう誰も眠れやしなかった。
そして翌日、里の上忍を捕まえてそれとなく曰く付きの場所かどうか聞いてみた。
どうやらオレたちがいた洞窟は、忍界大戦以前の戦いで、夜襲をかけられた場所だったらしい。

――死んでも尚、誰かを守ろうと必死なんてな。本当、頭があがらねェ話だぜ。

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