掌編小説 | ナノ


▼第二十七夜 「空かずの間」

開かずの間があるお屋敷があった。
玄関から入ってすぐの位置にある、使いやすい客間だったのに、物置にしてしまったから、何年も開けられていなかったそう。
子供のお守りでそのお屋敷に行った私たちに、家主さんは言ったの。

どの部屋で過ごしてもいいけれど、この部屋だけは開けてはいけない。
物が崩れて誰かがケガをしてしまうかもしれないから…。

約束どおりその部屋の扉は誰も開けなかった。
そのすぐ前にある和室で、子供とおもちゃを広げて遊んでいた。
だけどそのうち子供が同じ遊びに飽きて、赤丸や寄壊蟲に興味を持ち始めた。
そして私の白眼にも。

紙の裏に書いた文字を当てたりしたら、その子すごく喜んでくれて…。
だけど様子を見にきたお手伝いさんは、私を見るなり驚いたようだった。
ご主人様、ご主人様…そう叫びながら奥の部屋まで走っていってしまったの。

かんかんに怒った家主さんが、すぐに駆けつけてきた。
紅先生が必死に落ち度がないことを説明してくれて、ひとまずは納得してくれたようだったけど、それでも意見は変えなかった。

日向の娘がいるとは聞いていなかった。
依頼はもう完了で結構だから、帰ってくれ。

――あの部屋は物が詰め込まれていたんじゃない…。見られたくない何かが、隠されていたんだと思う。

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