掌編小説 | ナノ


▼第十八夜 「半身だけの」

幽霊か生きた人間かは分からない。
一時期、よく見かける人影があった。

それはいつも決まって、半身だけしか見えなかった。
木を陰に、電柱を陰に、塀を陰に…。
こちらに左半身をのぞかせている。

見ているだけで近づく気配もなかったからかもしれない。
なぜだか、怖いとはまったく思わなかった。
不思議と正体を暴こうとも思わなかった。
それどころか、もしうっかりはち合わせでもしたら、もう一生オレの前から消えてしまう気がして…。

結局、気づいたら見かけないようになっていた。
特に何か変化があったわけではないんだけど、もしかしたら、子供の頃だけしか見えない何かだったのかもな。

――いつか、右半身にも会ってみたかったよ。

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