掌編小説 | ナノ


▼第一夜 「肝試しの夜」

オレってば、アカデミーのとき、浮いてただろ。
仲間なんて呼べる奴なんかいなくて、友達だっていたか分かんねェ。
シカマルやチョウジやキバと公園で遊んでたときもあったけど、夕方になったらみんな親が迎えにきて、ああ、なんか違うなって思ってた。
今ほど身近に感じられなかったんだってばよ。

だけどオレはほら、諦め悪いところあるから。
構わず同級生にまとわりついてうざがられてたなあ。
本当は幽霊とかそういう怖いの、全然苦手だったのに、肝試しするっつったら、オレも行くって言い張ってみたりしてさ。

当然オレはのけ者にされた。
だからこっそり着いて行くことにしたんだってばよ。
集合場所に行っても、無視されるのがオチだから、腰抜かすくらい脅かして笑ってやろうって、墓地の中に隠れてたんだ。

夜九時回ってたかな。
待ちくたびれて帰ろうとした頃になって、明かりを持って小さな影を揺らしながら誰かがやってきた。
確か六人で肝試しやるって話してたから、二人ずつ分かれて来ることになってんだなって思って、オレはその影に回り込んだんだ。

わあって飛び出したら、うわぁって面白いほど驚いて、地面をはいつくばって逃げていくもんだから、思わず吹き出しちまってさ。
ゲラゲラ笑い転げてたら、後から出発したグループがもうそこまで来てて、見つかっったことだし、もう驚かせられないってんで、オレはかわりに言ってやったんだってばよ。
お前らの友達ってのは弱虫だな、って。

そしたらそいつらぽかーんとしてんの。
何言ってんだこいつ、みたいな顔で見てきてさ。
だからオレ言ったんだ。
さっき出発した奴ら、オレが脅かしたら必死に逃げてったぜって。
そしたらその中の一人が言うんだよな。
オレたちの人数、数えてみろよって。

六人いた。
ちゃんと六人全員。
そんでそいつらこうも言うんだ。
入り口は一つしかないし、オレらはそっから来たけど、誰とも会わなかったぜって…。

――今でもあの墓地を通ると、笑い声が聞こえてくる気がして、なんか駄目なんだよなァ。

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