掌編小説 | ナノ


▼イルカ)受け継がれてゆくもの

教え子を見送るときはいつも、ほっとするのと同時にほんの少し寂しくなる。
つい先日も、ナルトがようやく卒業試験を通過したばかりだった。

「イルカ先生にとっては、やり甲斐がなくなってしまったかもしれませんね」

「いやぁホント、気が抜けちゃって仕方ありませんよ…」

成り行きでナルトに額当てを譲ったために、この歳になって真新しい額当てを受け取る。
心機一転、新たな気持ちで頑張らなければなあと、次の入学者受け入れの準備をしているときだった。
ある人物の書類を手に、イルカの動きが止まる。

「…火影様の、孫か」

何度か火影室で遭遇をしてきた子供ではあったが、その子がとうとうアカデミーに入学する歳になったのだ。
月日がめぐるのは本当に早い。

「しっかしなあー、これはまた手こずりそうだなァ」

イルカは笑いながら、書類を机に置いた。
そしてコーヒーを入れてからもう一度書類を手に取る。
視線はずっと右上にある証明写真だけに注がれていた。

これまで会ったときにはなかったはずだ――写真の中の木ノ葉丸は、額にゴーグルをしていて、新たな問題児の予感にイルカは緩む頬を引き締めた。

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