▼ネジ)弱い者いじめ
額当てをしているヒナタを見かけたとき、思わず立ち止まってしまった。
相手は一人だが、ネジは任務帰りだ。
チームメイトが何事かと尋ねられれば、何もなかったかのように立ち去ることもできなくなってしまった。
「下忍になったようですね。おめでとうございます、ヒナタ様」
「あ…ありがとう、ございます…ネジ兄さん……」
相変わらず歯切れの悪い態度だった。
ヒナタにとって下忍とは、おそらく自ら望んだ道ではなく、流されてたどり着いた場所でしかないのだろう。
日向の宗家としてだけでなく、忍としても目の前をうろつかれたのでは、たまったものではない。
「…そういえば、面白い家庭訪問があったようですね。ヒアシ様があなたの下忍昇格を快諾したとか」
あなたは捨てられたんだ。
そう睨みをきかせると、思わぬところから助けが入った。
「ネジ、らしくないわね。あなた大丈夫?」
テンテンがネジの前に割って入り、震えるヒナタの背中をさすりだす。
かすかにうなずくヒナタを見て、ネジの心は加速度を増して冷めていく。
弱い者は、いつだって守られる。
そしてその犠牲になるのは、今度は自分なのだろうと。
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