掌編小説 | ナノ


▼チョウジ)大人の味

「ねえねえ、それ美味しいの?」

一人の少女がチョウジをのぞき込む。

「ん?ボクは好きだけど、好みは分かれるかなぁ」

任務の励みになればと、一メートル四方の草むしりが終わるたびに、チョウジは一掴みのスナック菓子を口に放り込んでいた。
万人受けするコンソメ味だったが、あまり絶賛すると頂戴と言われかねない。
さすがに子供にせがまれて独占するのも気が引ける。

「でも本当は美味しいんだよね?」

興味津々といった様子で食らいついてくる少女だったが、親を見つけると風のように逃げていった。

「まーたあの子は間食しようとして。夕飯残したら怒るからね!」

それから依頼人の厚意で、山盛りのおにぎりと麦茶がふるまわれた。
ありがたく休憩に入ると、また少女が寄ってくる。
チョウジは手に持っていたおにぎりを差し出して聞いた。

「いる?」

「梅干しはいや。みんな不味そうに食べるもん」

「だまされたと思って食べてみなよ」

チョウジが持っていると何でも美味しそうに見えるのかもしれない。
おそるおそる手に取った少女が、一口だけ食べて叫んだ。

「だまされたーッ!」

和やかな笑い声があたりに響いた。

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