掌編小説 | ナノ


▼ナルト)バカ呼ばわり

額当てをしてから、怒鳴られる回数が減った。
だから自分の存在を認めてもらえているのだと、勘違いしていたのかもしれない。

「バカが!お前に出せる飯なんざねェよ!!」

久しぶりに聞いた心ない言葉は、ラーメンと共に振ってきた。
オーダーが聞こえないのかと何度か声を張りあげたが、どうやら故意の無視だったらしい。
新メニューの看板につられなければよかった、と思う。

もう腹ごしらえに他の店には入れないし、家に帰ってシャワーを浴びるには遠すぎる。
さらに任務開始まであと三十分足らずだ。

ハァ、と溜め息をつきながら歩く。

このまま集合場所に向かってしまおう。
そして橋の上から川に飛び込めば、この情けない姿をさらさずに済む。
とは思ったものの、あまりいい思いつきではなかったようだ。

「――あんたバカなの!?そんなに濡れてたら、風邪ひくわよ!」

土手で自然乾燥中、到着したサクラに見咎められた。

「ハハ、バカだよな。川に落ちちまうなんてよ…」

「本当にバカ。大バカよ。忍者なら水面くらい着地しなさいって」

投げて寄こされたスポーツタオルに、ナルトは顔をうずめた。

同じバカだと言われたのに、なぜだろう。
サクラからのそれは、狂おしいほどに切ない。

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