掌編小説 | ナノ


▼第六十五夜 「生きている絵」

授業中の早飯が見つかって、アカデミーの資料室に閉じ込められたことがあった。

職員室の近くにある小さな部屋。
そこは灯りもつかないし埃っぽいし。
んでもって色んな物がぎゅうぎゅうに詰め込まれているからすんごくせまい。
雑に放り込まれたのがむしょーに腹がたって…
閉められたばっかの扉に、そのへんに積まれてた教科書を投げつけたんだってばよ。
そしたら、近くの棚に置かれてた箱がひっくり返った。

中には巻物が入れてあった。
暗かったしあんまよく見えてねーけど、印の形を絵にしたものとか、里の歴史を書いたものとか、たぶんそんな感じの。
低学年向けの授業で使うようなものだった気がする。

で、落ちた拍子に開いた絵巻物が一つあった。
それがなんか違和感があったっていうか…。

ふつう、絵巻物って、切り取られた場面が右から左にいくにつれて、物語が展開するもんだろ?
だけどその絵は、一つの長い絵になっていた。
巻物の長さだけ胴体の長い龍だった。
静かに眠っているように見えた龍が、一瞬だけ目を見開いた気がした。

やばい。
なんかやべー動物が封印されていた巻物。
それを開いちまったのかと思って、扉をガンガン叩き続けた。
だけど通りがかった生徒が開けてくれて、イルカ先生を連れて戻ってきたもきには、もう…巻物は白紙になっていた。

アカデミーに禁書はないし、見間違えだろうって片づけられたけど、部屋から出るときに気づいちまったんだよなぁ。

――巻物が落ちていた床には数十センチの、こぼした墨をするような跡が残ってた。

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