▼ 黄昏に微笑む (1/16)
「いのちゃんもサスケ君が好き」
いましがた、サクラに言われた言葉を繰り返す。
「だから、ライバル…」
強気な宣言したサクラは、有無を言わさず、一人で帰ってしまった。
その後ろ姿ももう見えない。
一度も振り返らずに、あの子は帰った。
――それがなんだっていうの?
取り残されたベンチの上で、遅れてやってきた怒りに私は顔を歪めた。
私はサクラがサスケ君を好きになったのを承知であんたと一緒にいた。
他にもサスケ君のことを好きな人はいっぱいいたし、それでいいと思ってた。
それなのに、なに?
泣き虫サクラが私を捨てた?
一人で友達すら作れなかったあんたが、好きな人が一人出来たくらいで、なにいきがってんのよ。
握りしめた拳をベンチに叩きつけても、痛みを感じなかった。
それほど私は怒っていた。
違う、戸惑っていたのかもしれない。
ずっとそばにいた友達が離れることなんて今までなかったから。
だから、この感情を処理しきれなかった。
そんな私に声をかけたのは、アカデミーで同じクラスの女の子。
「へぇ、山中さんもそういう顔するんだ」
変わり者の名前だった。
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