時空の死神 | ナノ


▼ 1.サバイバル演習 (1/14)

ルールは簡単だ。
昼までに鈴を取れば、下忍になれる。
ただし取れなければアカデミーに逆戻り。
候補生三人に対して、鈴は二つ、カカシの腰につけられている――。

木陰で身を潜め、状況整理を終わらせたサスケは、次にしげみの中に適当なのぞき穴を探した。
すぐにほどよい位置にそれを発見すると、片膝を立て、音を立てないよう注意を払いながら様子を窺う。

開けた空間でなびく銀髪、ピンポイントで標的の上忍が見えた。
顔のほとんどを隠したその上忍は、唯一外気に晒されている右目だけで、本を片手に読書をしている。
緊張感のまったくないその姿に、初めはナメられていると思った。
が、すぐに思い直す。

演習開始時、早まって攻撃を仕掛けたナルトの動きを封じたのは、まぎれもなく今サスケの視線の先にいる人物だった。
素早くムダのないあの動きを、サスケは目で捕らえることすらできなかった。
人格はともかく、実力は本物だ。

そう、本物だからこそ問題なのだ。

遡ること数日前。
その日、卒業試験に合格したサスケたちは、アカデミーの卒業と共に担任だったイルカから額当てを受け取った。
後日には説明会も開かれ、これで晴れて木ノ葉の忍。
翌日からは任務に修行に追われる日々を想像していたが、その認識は甘かった。

下忍昇格試験を言い渡されたのはつい昨日のことだ。
アカデミーを卒業したとしても実質下忍として起用されるのは卒業生二十七名中わずか九名――三分の二が試験で容赦なく振り落とされることとなる。
中でもサスケの試験官は合格者を出さないことで有名だった。
そんな事情をサスケは知る由もなかったが、己の運のなさには薄々感づいていた。

しかしそれでも鈴を奪える自信がサスケにはあった。
向こうが上忍でいくら経験を積んでいようと、勢いのある下忍を三人も相手にいつまでも体力がもつとは思えない。
それを見越してか時間制限はあるが、決して無理難題ではない。
過去に似たような試験を乗り越え昇格した者がこの里にはごまんといるはずだ。
これは自分がただ、その中の一人に選ばれるという、それだけの話だ。

だが残りの二人はどうだろう――サスケは即席のチームメイトを思う。

サクラは確かにキレ者だが、実戦で役に立つタイプではない。
ナルトに至っては論外だ。
考えなしに突っ込んで、事態を悪化させるに決まっている。
現に今も、見え透いた攻撃を仕掛けた直後、あの教師の低俗な体術にあっさりやられていた。
近くの川までかなりの距離を飛ばされ、派手な水音がサスケのいる場所まで届いた。

「ウスラトンカチが、二人…」

あの馬鹿が、何度も背後をとられるからだ。
寅の印を組まれた時点で実戦なら死んでいた。

だが今のサスケにナルトをとやかく言う資格はない。
演習開始から一切隙を見せない上忍に、サスケはまだ、何も仕掛けてはいなかった。

――今なら、やれるか?

右手をホルダーまで伸ばした、そのとき。
ナルトの落ちた川から二つの手裏剣が飛び出してきた。
その軌道を目で追っていくと、本を読んでいる上忍の方に真っ直ぐ向かっていく。
狙いは外れていなかった。
しかしその攻撃はやはり防がれ、手裏剣はカカシの人差し指と中指を軸に回転し、徐々にその威力が殺されていく。
しかもその間カカシは本から目を離していなかった。
それを見て、サスケは途中まで伸びかけていた手をおろした。

今はまだだ。
隙を見せない限り、手裏剣なんて無意味だ。
それどころか、せっかく隠れたのに居場所が知れてしまう。
今はまだ、動けない。

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