厳罰に処す/あきらさんへ



※元秋×未鷺




「好きです……付き合って下さい」

校舎裏に呼び出されて受けた告白。
赤らんだ顔はそれなりに可愛くて、未鷺に会う前だったら良い返事をしたかもしれねえな、と元秋は客観的に思った。

「悪いな。好きな奴がいる」

そう答えると。相手は悲しそうに顔を歪ませた。

「あ、あの。一度でいいので抱きしめてもらえませんか」

震える声で頼まれて、元秋は頷いた。
小さな身体を腕に包んでやる。
少しすると、「ありがとうございました」と涙声で言って、走って行ってしまった。

「小さな生徒が大男に絡まれているという通報があった」

背後から聞こえた声に元秋が振り返ると、無表情で未鷺が立っていた。

「お前今の見てたのか」
「……どうやら通報は本当だったようだな。後日、学生課から処罰の内容が正式に通知されるので覚悟しておくように」
「おいおい待てよ」


元秋はくるりと踵を反して戻ろうとする未鷺の手首を掴んで引き止める。

「何怒ってんだよ」
「怒っていない。俺は仕事をしたまでだ」
「俺は何もしてねえだろ。見てたならわかんじゃねえか」
「……抱きしめただろう」

未鷺は元秋の手を振り払うと不快そうな声を出した。

「は?」
「お前はあの生徒を抱きしめただろう」

冷たい目で睨み上げられ、元秋は気付いた。

「お前嫉妬してんのか?」

気付いてしまえば未鷺の不機嫌も可愛いものだ。
にやにやと口元を緩めながら未鷺の顔を覗き込む。

「嫉妬、では……ない」

歯切れの悪い返事は肯定しているようなものだった。
元秋は先程の生徒にしたより強く未鷺を抱きしめる。

「お前がいるんだから他の奴なんて眼中にねえよ」
「どうだか」

未鷺は素っ気ないふりをしながらも背中に腕を回し返している。

「処罰のことなんだけどよ」
「……?」
「お前の部屋でだったら謹慎処分でもいいぜ」

割と真剣に元秋が言うと、呆れたように未鷺は笑った。




end





あきらさんのリクで『未鷺の無意識な嫉妬に喜ぶ元秋でラストは甘々』でした!
嫉妬未鷺を書くのが楽し過ぎました。
リクエストありがとうございました!

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