恐怖の目覚め


 
 
その日家に帰ると夢を見た。いかないで。いかたいで。忘れないで。と君が私に手を伸ばす。忘れない。絶対に君のことは忘れないから泣かないでほしい。でも、私は、今の私にはこの居場所がとても大切で、君だけが全てとはとても言えないの。と言うと君はとても悲しそうな顔をして言葉を詰まらせた。

君には私しかいなかったのに、私には君以外もいるなんて、私はとても狡いのかなあ。と、起きたら頬に涙が伝ってた。

そしてスクアーロが私の顔を眉間にしわを寄せながら覗き込んでいて、驚いた私は布団の中に隠してあるナイフでスクアーロの頬に斬りかかってしまった。

「キャァァァァアアアアア!!!」

と叫んだ私の声に反応して、ベルや、フラン、部屋の近くにいたであろう部下たちがおずおずと部屋を覗き込んできた。乙女の部屋には流石にベルたちもはいりづらいようだった。

「え、スクアーロ何してんの」

「こんなにみんないる中で、朝ばいですかー?スクアーロ先輩もなかなかやりますねー」

「ごごごごめ、な、スク、え」

混乱している私は、なぜここにスクアーロがいるのか、なぜ私はスクアーロに斬りかかってしまったのか、なぜ私はあやまっているのか、なぜベルやフランが面白そうにこちらをみてにやにやしているのか、なぜ部下たちが青い顔をしてソロリと部屋から立ち去っていってしまったのか、処理ができないままひたすら手をスクアーロの頬に持ってきたり、ナイフを落としたり、わたわたとしてしまうだけだった。


 


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