「ハーマイオニーがね」 エスプレッソをテーブルに置いて、最新のクィディッチ雑誌に顔を突っ込む様にして読んでいる彼に言ってやった。 大好きなチーム(名前は忘れた)のページがあるとかで爛々と輝いていた鳶色の目がちらりと反応して瞬いた所為で、その幼さが垣間見えておかしくなる。 「手紙出してた」 賢く強く愛らしい彼女を、私は独善的に愛している。全てにおいての最上位を目指す姿は酷くキラキラしている。それに魅入られ付き従い、いつしかその想い人に言い知れぬ黒ずんだ感情を持ち始めるのにそんなに時間はかからなかった。 「誰にと思う?」 からかうみたいに問い掛けてやっと彼の眉間に皺が寄る。一時期彼と彼女の、そして私と彼女の関係を崩しかけたあの眉毛野郎を忘れる位、馬鹿ではなかったのに少し安心した。 「可愛かったなぁ」 頬を赤くし恥じらいながら、梟に手紙をくわえさせて居た彼女。賢く強く愛らしい彼女は時として、この世界に存在し得るどんな乙女よりも清純に見える。 「僕には関係ない」 「またまたぁ」 「──少なくとも、 君に取られるよりは嫌じゃないね」 「───」 そうだねと、返す事しか出来ない自分は、そんな彼女みたいにキラキラと、夜空に瞬く星と同じ様に、この薄暗く冷たい世界の中で、どの位光り輝いて居るのだろう。少なからずそれは大した物では無いのだ。周りが燦々と瞬光するから自分も、とか、そういう誤視のままで。 「はは、」 涙が何故浮かびそうなのか分からない。 ツンと鋭い痛みが鼻を麻痺させるのを防ぐ為、私は温くなったエスプレッソを天井を仰ぐ位大きく飲み干してしまった。 眩しいね、と呟いた私。それは魔法によりその存在を透過された天井から降る陽光が、目に沁みる位輝いて居たからだ。 光葬 (光はすぐに消えてしまうように、私も貴方の記憶から消えてしまいたい) ×
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