虚像(猫と鹿)




「最悪、だ」

泣いて居るのを、見てしまった。
涙なんて持ち合わせて居るのか疑問になる様なひねくれた性格をしているくせに、空き教室でただ1人、彼が声を殺して泣いて居るのを見てしまった。

「、何で」

ぐしゃぐしゃになる思考に嫌な顔をして、眼鏡を外し空を見上げる。
今朝は初めて、彼女から挨拶してくれたから自分はすごく幸せだったのに。

「…くそ、」

幸福感が除去されて、ゆっくりと、吐きたい位の白い気持ちが胸の中に広がって行くのを歯噛みしながら我慢した。
それは卑怯だ、折角貼り付けていた偽善者の仮面が剥がされても、残るのは只の弱虫な自分なのだというのに。

彼女の笑顔がふと脳裏をよぎる。
あれは後ろの彼に向けられたのではないのだろうかと、不覚にも願った。



虚像=実際とは異なる、見せかけの姿。
(長距離走者、悶死)



この位未練タラタラな猫とかどうかな。
鹿は猫と百合に甘過ぎるよね。絶対。



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