吾徒(鹿と猫)
「僕はリリーが好きだ」
何が気に入らない。それは耳にできものが出来そうな位に言われた言葉。
別に心底嫌いなワケ、じゃあない。つつけば出て来る藪蛇で、打てば出て来る悪杭で、だけどそんな外的侵入をここぞとばかりに許さない心意気を、自分はむしろ、好いていたのではと思う。
「ふむ、」
彼が自分を嫌っているのが好きだった。
(その距離が何よりも心地良く、)
彼がリリーを好きなのが好きだった。
(その共通項に僕は親近感を感じ、)
彼がとても真っ直ぐなのが好きだった。
(その輝きに僕は何度も憧憬した)
「なら、」
そういう関係も良いじゃあないか。
友達でもなく、ライバルでもない、けれどその友情とか敵対心とかよりも、僕と彼の絆は余程強固だと思った。
友情の様に薄っぺらくなんかない。
敵対心の様に中和性すらもない。
鉄よりも硬く空より広い、そんな半分誇張しすぎた気持ちだったからだろう。
「此方も主張しよう」
僕らの間に居たのは誰だ。
僕らが好きなのは誰だ。
僕らの共に通ずるのは、誰だ。
忘れていたのか、忘れていようと思ったのか。それすらも忘れていた様に思う。
「僕が、リリーを好きだ」なれ合うには自分達は、誰かを深く愛しすぎてしまったと僕は思う。
吾徒=仲間達、同類。
(その瞬間から始まっていたというのに)
こんな事を書いてはいるけど、別に鹿猫ハァハァとかではあまりないです。
どっちも僕だからいまいち分からん。
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