爪牙(水仙と夢)




「いつもこんなに忙しいの?」

乱れても居ない金糸を解きほぐして、彼女は意外と呆気も無かったその終焉に拍子抜けしたのか首を傾げた。

「状況によりますね」

是非とも自分もやってみたいというお嬢様の我が儘だと、渋々苛立ちを噛み砕いて連れて来たのだが、なかなかどうして彼女はかなりの活躍を見せてくれた。
私すら気付かなかった魔法を弾き返し、相手を返り討ちにしたあの手腕は私でも思わず息をするのさえ億劫な位に流麗で耽美で、音色の中で振るう舞いの様。

「まぁ、こんなに怪我をして」
「彼等に比べれば何とも、」
「──駄目よ」
「はい?」
「尊い犠牲の為の彼等なのよ。
散っていった彼等にそれは失礼だわ」

嗚呼、なんて鋭い正義を灯すのだろう。
死者にすら命の尊厳と誇りを求め認めるその姿に、その純金の色は良く似合う。

「人間は誇りの種族よ。
何人も誰一人、それは穢せ無い」

でも嗚呼、砂糖菓子のお姫様。
貴女の誇りはあまりに脆いのを私は知っています。誰も手に触れないのはその色が美しいからでなく、ほんの少し力を入れれば呆気無く、まるで命の様に。

「壊れると、分かって居ますから」
「──そう?残念だわ」

血まみれの砂糖菓子はコロコロと笑う。
それでも私は、貴女に触れたいと願うのだ。その白は血と交わり、まるで薔薇の様に静かに仄かに、赤らむのだろうか。
(もし貴女が涙するのなら、)
(それはとても美しく稀有で儚い。)
(可憐で美麗で優美なその雫を、)
(どうかこの愚かな魂に落つして下さい。)



爪牙=頼りになる家臣。
(お嬢さん、手遅れですよ)



ボデーガード夢子ちゃんその2。
犬から離れた後は死喰い人のお仕事にたまに出てます。蛇寮組とも面識有り。

…趣味なのか知らんが、何故かどんどん秘密結社化してくうちのヴォル様陣営。
誰か止めて、止められる物ならな!(←



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