11逆夢*

ルシウスとベラトリックスが去ってからは、穏やかな時間が流れた。

本を読んだり、窓の外を眺めたり、ハンスと喋ったり。

段々と日にちの感覚がなくなっていくので定かではないが、ヴォルデモートが出かけて4、5日経っただろうか。
暫く、とはどれくらいなんだろう。
もしかして数週間、数か月……。

噛み跡は少し薄くなってしまった。

毎日、毎日、夢をみる。
ヴォルデモートが帰ってこない夢。彼に捨てられる夢。彼に殺される夢。

今夜は良い夢がみれますように。
祈りつつ、眠りにつく。

――しかし、祈りは届かなかったようだ。

今までで1番辛い夢を見た。

ヴォルデモートが、目の前で死んでしまう夢。

苦しそうに顔を歪ませる彼の近くに行きたいのに、手が届かない。
すぐそこにいるのに。
やがて動かなくなる彼を目の前に、わたしは泣き崩れる。

「――はっぁ……!」

涙で霞んだ世界で、人影が揺れる。
すぐ横でヴォルデモートが本を読んでいるように見えた。

生きてる。
手が届く。

縋るように抱きつけば、ヴォルデモートの匂いと衣服の感触がわたしを包み込む。

そのリアルさに、これは夢か否かと考えていると。
彼の手が頬に伸びてきて涙を掬った。

「泣いているのか」

夢じゃない。

とんでもなく大胆なことをしてしまったことに気づき慌てて離れようとしたが、腰に手を回され、逆に引き寄せられてしまう。
目と目を合わせるのはとても久しぶりな気がした。

「先程、戻った」
「……おかえりなさい、」

帰ってきてくれた嬉しさと距離の近さが、寝起きのわたしには心臓に悪い。

「悪夢でも見たのか」

こくりと頷くと、なぜか笑む。
その表情に大きな安心感を覚えた。

怒ってない。戻ってきてくれた。捨てられなかった。生きてる。
夢が覆されて、本当に良かった。

安堵に包まれたわたしを更に引き寄せて、ヴォルデモートはワンピースの肩紐をずらし、肩の噛み跡を確認した。

「薄いな……」

跡をなぞるように舌を這わされ、身が震える。

そして、跡の上を何度も強く吸われ、その度にちくりとした痛みが走った。

「っ……?」

そのまま鎖骨の上、二の腕と降りてきて。

もしかして、キスマークを付けられているんじゃないかと気づいたときに、ヴォルデモートの細く骨ばった手がワンピースの下に滑り込んできて、その刺激に溺れる。

右手で胸の突起を転がされ、ぞわりとした快感が走って。
左手で秘部に触れるか触れないかの内腿辺りを撫でられ、内部が彼を求めるように収縮した。

「……ん……っ」

ふいに入り口を擦られ、吐息が漏れる。しかし暫くして、また内腿へ戻ってしまう。それを繰り返されてもどかしい。
胸の突起は軽く引っ張られたり、撫でられたり、穏やかな刺激が続いていく。

なんだか愛撫が焦れったい。
でもじわじわと自分が濡れていくのがわかる。
すっかり調教されてしまった。

「淫乱になったものだ……」

わたしから溢れた液を彼は掬い取り、2人の顔の間で確認する。
彼の指はぬらりと艶めいている。
眉を寄せるわたしに構わず、彼はそのまま舐めとった。

羞恥心で前を見れなくなってしまったわたしをヴォルデモートはゆっくりと押し倒し、ベッドへうつ伏せに寝かせる。
うつ伏せにされるのは初めてで、どうすればいいかわからず泳いだ手で大きな枕をぎゅうっと握りしめた。

見えないけれど、しばらく衣擦れの音がした後、パサリと衣服が落とされた音がしたので、彼が衣服を脱ぎ捨てたことがわかった。
ヴォルデモートが情事のときに裸になるのは珍しい。トムの姿になったあのときしか無いかもしれない。

彼はわたしに覆い被さるようにして、指と指を絡めるように上から左手を重ねた。
反射的に首を左に傾ける。

手を繋ぐって、こんなに満たされるんだ。

そういえばどこかで、手を繋ぐと2人の手の粒子が混ざり境い目がなくなって細胞レベルで交わっていることになる、という話を聞いたことがある。
今、わたしとヴォルデモート様は、細胞レベルで交わってるんだ。

嬉しくなって笑みがこぼれてしまう。

「今度は笑っているのか?」

おかしなやつだ、と付け足してヴォルデモートはわたしの背中にキスを落としていく。
時折強く吸われて、またも彼の印が刻まれていく。

素肌同士が触れ合うと、2人の温度が重なり汗が滲んで、とても官能的だった。

ヴォルデモートの肌はあまりハリは無いが、しっとりとしていて心地よかった。

そういえば、いくつなんだろう。
年齢の差なんて考えたことがなかった。
もしかしたら魔法使いだし、不老不死かもしれないし、かなりの差があるかもしれない。

しかし、そんなことはすぐにどうでもよくなる。
ヴォルデモートの体がわたしの体に覆い被さるようなこの体勢は、腿やお尻で彼のものが硬くなっていくのを直に感じて、秘部を疼かせた。

「んっ……」

お尻を柔らかく撫で上げられ、こそばゆさに背中をそらす。
ゆっくりと全体をなぞるように動く手の動きはとても厭らしかった。

「体を浮かせろ」

言われた通りにベッドに肘と膝をつくと、少し腰を持ち上げられる。
かなり恥ずかしく、振り返って抵抗しようとした瞬間、彼のものが秘部にあてがわれる。
は、と息を吐く声が聞こえて。
後ろから勢いよく挿入された。

「んぅ、あぁっ、ぁ……!」

抉るような抜き差しを繰り返される。
今までの緩やかな愛撫が嘘かのようだ。

「ナナシ、……っ」

快感に声を震わせながら、ヴォルデモートがわたしの名を呼んだ。
返事をする余裕はなかった。
脚がガクガクと震え、体勢を保つのがやっと。

肌と肌がぶつかる音が暫く響き、奥への刺激に耐えかねたわたしが絶頂を迎えると、彼もわたしの中へ欲望を注いだ。

「はぁ、は、……あ! そん、な、」

乱れた呼吸を正そうともせず、彼はそのまま腰を揺らし始める。
重ねられた左手に込められた力が強まるのを感じて、ヴォルデモートが衝動的になったことを察知した。

「あ!」

耳を甘噛みされ、嬌声が漏れる。
唇を耳に当てたまま、ヴォルデモートはわたしに囁いた。

「会わぬ間、お前を抱きたくて、仕方なかった」

思わず目が見開く。
思いを馳せていたのは、わたしだけじゃなかった……?

夜な夜な悪夢を見るほど、不安だった。
あの男に触られたわたしを、彼は捨てるんじゃないかって、殺すんじゃないかって。

でも今、信じられないほど幸せだ。
離れていても、わたしを求めてくれていたなんて……!

「ひぁあっ」

ふいに、空いた右手で肉芽を擦られ、悲鳴にも似た甘い声をあげてしまう。
膣への刺激と肉芽への刺激、どちらかにしてくれないと耐え難い。
目に滲んだ涙は、彼の言葉による喜びと与えられる快感が入り混じっていた。

「覚悟しろ、」

2度目の絶頂に体を震わせるわたしに彼は宣告する。
こんなものでは済まさない、今からだ、ということだろうか。

いつまで意識を保っていられるだろう。
でも少しでも長く、夜を共にしたい。

ヴォルデモートは1度わたしから自身を引き抜くと、ベッドに倒れこんだわたしの肩を掴んで、顔を寄せた。
呼吸が頬に触れるくらい近くまで来て、彼の動きが少し止まる。

ずっと待っていた瞬間だった。

「ヴォルデモート様……」

愛しげに名前を呼べば、次の瞬間、ヴォルデモートはついばむようなキスをくれた。

わたしたちの、初めてのキスだった。

求めるように彼の首に手を回せば、タガが外れたように何度もキスを繰り返され、だんだんと深みを増したものへと変貌していく。
お互いを貪り合うかのように。

このまま溶け合って、1つになれればいいのにな。

叶わないと知っていながら、願わずにはいられない。
そんな甘くて切ない時間が、窓から太陽の光が差し込むまで続いた。

[ 11/57 ]

[] []
[目次]
[しおり]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -