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息が一瞬止まった。
空いた口が塞がらないとはこのことか。
「なんだその幽霊でも見たような面は…俺がここにいるのがそんなに珍しいか?」
眠たそうな目。
白い肌。
通った鼻筋。
最後に見たときよりも一段と男らしくなったサソリがそこにいた。
信じられない。
「な、ななななんでここが…、」
「ババァに聞いた。」
「バ、ババァ?あ、チヨバアかなるほど…じゃなくて!わざわざ、なんの為に…、」
動揺してどもりまくる私をよそに、サソリは冷静に答えた。
「あァ俺、明後日から暁高校に通うから。」
暁高校。
それは私が現在進行形で通っている高校な訳で。
おいちょっと待て初耳だぞそれ。
「…ってだからって!ここに来る理由になってないし!そもそもなにこの荷物!」
「ここからの方が近いからに決まってんだろ、うるせェな…バカなりに理解しろ。」
「今すぐ出てけくそガキコラァ!!」
この1年でさらに生意気になってないかこの野郎!
なにため息吐いてんだ!
吐きたいのは私だ!
「今さら住む人間が1人増えたところで、なんも変わりゃしねェだろ。」
「変わるわ!生活費が!」
「どうせ出してんのはババァだろうが、てめェにあれこれ言われる筋合いはねェ。」
「うっ…、いや、つか、そもそもなんで暁高校にしたの!?サソリだったらもっとレベル高いとこいけるじゃん!」
眉目秀麗、頭脳明晰。
中学生からその言葉が似合っていたサソリだ。
暁高校も偏差値が低い訳ではないけど、高くもない。そんな微妙なところだ。
なのに、どうして。
「お前が行ったって聞いたから。」
「…は、」
「…あ?忘れたのか?…言ったはずだぞ。」
俺とお前はずっと幼馴染みだと。
「……………。」
「忘れてんじゃねェよバァカ。」
「…………あァ、うん……ごめん。」
気が抜けた。
…バカはお前だくそガキ。
「勝手にいなくなりやがって…なめてんのかてめェは。」
「…悪かった、ごめん。」
ダンボールの箱を持ち上げて、サソリの横をスタスタと歩く。
「部屋なら2階の空いてるとこ、勝手に使っていいから。」
「ん、にしても結構でけェなここ。いいとこ住んでんじゃねェか。」
「………チヨバアン家の方がでかいよ。」
サソリの感心したような声を背に私は、2階へと上がっていった。
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