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「とりあえず、サソリの部屋はここね。」
ダンボール箱を部屋の真ん中に置く。
中身はなんだか知らないが、貴重品だと思うと雑に扱うことはできないのでそろりと降ろした。
「私の部屋はここの1つ隣だからなんかあったら呼んで。」
「あァ。」
「じゃあダンボールさっさと片づけようか、ぶっちゃけあれ邪魔だから。」
「お、やってくれんのか悪いな。」
「お前のだろうが!お前もやれ!!」
ちゃっかり私に押しつけようとしていたサソリの背中を蹴り飛ばし、部屋から出る。
全く、ふてぶてしいのは変わらない。
小さい頃のあどけない笑顔はもうこれっぽっちも残っちゃいない。どこで教育を間違ったんだろうねチヨバア。
そんなことを思っているとサソリの肩が小刻みに揺れていることに気づいた。
「…サソリ?」
「く、くく…やっぱゆめしかいねェよ、俺にこんなことしてくる女は。」
それはそれは心底楽しそうな顔で。
ニヤリとか悪い笑みではなく、くしゃりとした笑顔だった。
そうだろうね。
サソリにこんなこと言える度胸のある女なんて、世界で私1人しかいないだろうよ。
別に嬉しくないけど。
「…まァ私以外でサソリを蹴り飛ばす女の子がいたら見てみたい気もするね。」
「ふざけんな、お前だけでいい。こんな屈辱行為、他の奴にやられてたまるか。」
「…ヘェ、私はいいんだ。」
「お前とは付き合いが長いから諦めてるだけだ。」
サソリはそう言うと階段を降りていった。
トントン、と足音が私の鼓膜を振動させる。
「……ふざけんなよバカ…。」
そんな、特別みたいな言い方しちゃって。
浅はかな私の心臓は、お前の言動の1つ1つに激しく鼓動を打っているんだ。
このままだともたないじゃないか。
「しっかり、しなきゃ…、」
これから同じ屋根の下で暮らすんだ。
こんなことて狼狽えてちゃ、ダメだ。
下の階から手伝いを催促するサソリの声がして、私も階段を降りた。
赤い実が誘う非日常よっ…と、
ゆめ、それ落とすなよ。俺の大事なもんが入ってっから
なにが入って…っわああああああ!!!
あ、バカ見んな
な、なにこれ!?標本!?しかも内蔵じゃんこれ!心臓に悪っ!!どっから持ってきたのお前!!
ババァのとこからくすねてきた
いやいや今普通にさらっと言ったけどなにしてんの!?
これも将来のためだろ…そうだ、今度はホルマリン漬けでも持ってくるか
ふざけんなこの悪趣味!!!
カエルのとトカゲ、どっちがいい?
やめろバカーーー!!!!
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