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ふと、カレンダーに目をやる。
「……………。」
『…もうそんな時期か。』
「…うん。」
『早いものだな。』
「うん。」
とある日付に指を滑らせながら優は短く返事を返すだけだった。
『…今年も行くのか?』
「うん、明日で1週間前だし今日の夜には出るよ。」
三代目に休みもらわなきゃ、とカレンダーから指を離した。
それを聞いて烈火は苦虫を噛み潰したような顔をする。
『…もういいんじゃねェのか。』
「……………。」
『あれはゆうの責任じゃない、あいつらの自業自得だ。そこまでお前が自分を責める必要はない。』
烈火の言葉にただ珍しいな、と思った。
まるで自分を気遣っているような言い方をしたからだ。
少しだけ優の心がじんわりとした。
「…はは、烈火は優しいね。」
『……………。』
「大丈夫だよ。これは…あの出来事は私の人生最大の汚点だから。だからだよ。」
勘違いしないで、と儚げに。
それでもその笑みは美しい、と烈火は密かに思った。
「三代目ー。」
ノックをして返事を待たずに優は部屋に入る。
そこには三代目火影、ヒルゼンと…
「あれ?ナルトにカカシ…サスケにサクラも。」
「優じゃん!オッス!」
「おっす。サスケとサクラもおはよ。」
「…あァ。」
「おはよう優!」
「優、俺には?」
「はいはい、おはよカカシ。」
カカシの満足そうな笑顔に優はクスクス笑った。
年上だが彼のこうゆう子供っぽいところが可愛く思える。
「優!今日、任務終わったら修行付き合ってくれってばよ!」
ナルトは優に抱きつきながら、笑顔で言う。
すかさずサスケが怒鳴った。
「てめェナルト!優にベタベタしてんじゃねーよ!」
「へへーん!羨ましーんだろサスケ!」
「え?そうなの?じゃサスケもおいで!」
「んな…っ!バカ言ってんじゃねェ、このウスラトンカチ!!」
サスケは否定するが、赤くなった顔で言われても最早なんの意味もなかった。
「こらナルト。優は火影様に用があって来てんだから邪魔しなーいの。」
カカシが優からナルトをベリベリと引き剥がす。
ナルトはあー、と間抜けな声を出して優から離された。
「ごめんねー優。」
「いんや、ナルトは可愛いから許す。」
可愛いってゆーな!!と、ナルトから怒号が発せられた。
「優、どうしたのじゃ?お主から用とは珍しい…しかもこんな早くからとは。」
三代目が優に問う。
今は優に任務の依頼はない。
暇つぶしに来ることもあるが、今はまだ朝方だ。
故にわざわざ訪れた理由が分からなかった。
「あァ…三代目、お願いがあるんだけど。」
「ホ、ホ…珍しいのう、なんじゃ?」
欲がない優の言葉に三代目は微笑みながら聞き返す。
優は向き合って真剣な眼差しで三代目を見つめた。
「2週間、休みをくれない?」
「2週間?なにか用でも……、!」
「そう、2週間。」
「優、お主まさかまた……、」
「うん、あそこに行く。」
三代目はガタン、と立ち上がった。
「…もう必要ないと何度も言ったはずじゃろう。」
「そうだね、去年も言われたかな。」
「ならば何故!」
「三代目。」
優は眉をハの字に下げて苦笑する。
「…あんたがそんな顔する必要はないじゃん。」
「……………。」
「悪いけど何度言われようと私はあそこへ赴く…赴かなければならないんだ。」
「……………。」
「皆きっと思ってる、一生かけて罪を償えって。」
「誰もそんなことは言っておらん!!」
「言ってないけど思ってるんだって。」
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