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烈火との口論からさらに3日後。
つまり里から出て6日が経過した。
「……………。」
長く続いた森を抜けてようやく目指していた場所に到着した。
『…結構育ったな。』
「…………うん……。」
優はゆっくりと土地を歩く。
辺りは色とりどりの花で埋め尽くされている。
ここ数年でかなりの量の花が育った。
『ほんの数年前まではなになかったただの土地だったが…変わるものだな。』
「そうだね………。」
『………ゆう?』
目を細めて花畑を見渡す優に烈火は声をかける。
「とても…きれいだね………。」
『……………。』
「数年で、こんなに……………。」
『……あァ、そうだな。』
静かに同調の意を伝える。
優はゆっくりと歩き花畑の中心へと向かう。
そこには大きめの石が花に埋もれるように置かれていた。
ゆっくり、ゆっくりと歩み寄る。
『平気か。』
「………うん。」
『………そうか。』
短い会話が終わる。
そして優の足も止まった。
「……………帰って、来たね…。」
『……………。』
「お帰り、なんて…誰も言ってくれやしないだろうけどさ…。」
『……………。』
「…ここが……私の故郷だからなァ……。」
言いながらそれの前に座り込む。
多くの名前が彫られたそれ。
そこに名前を彫られた者はもうこの世には存在していない者達だ。
その者達の命日は全員同じで。
「………恨んでるだろうな…。」
優は慰霊碑をそっと撫でて苦しそうに言った。
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