×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
プロローグ




私が住むアパートの部屋の隣に、誰かが越してきた。前まで私と同い年くらいの子が住んでいたのだが、おそらくもう大学を卒業したのだろう、3月の後半になってからその人は引っ越して、しばらく誰も住んでいる気配がなかった。

人が引っ越している、と分かったのは、隣の人が出てきたタイミングとちょうど私が出るタイミングが一致したからであった。不思議なことに、引っ越しのトラックなどが来ている兆しがなく、しかし物音だけが突然聞こえるようになったので、もしかしてお化けではないか?と一人怯えていたのだが。思わず私が「あ」と声を出すと、聞こえたのであろう、隣の部屋の人がこちらを見た。隣の人は、背丈がすらりと高く、顔は凹凸がはっきりしていて、顔色は雪のように白い、端的にいうとイケメンだった。少し浮世離れしている。私はあまりの美しさに言葉を失った。ただただイケメンと見つめ合う無言の時間が続く。

「あ、えっ〜と……は、初めまして。隣に住んでいる者です。」

耐えきれなくなって、当たり障りない挨拶をした。イケメンは何故かじっとこちらを見つめ続けている。綺麗な顔に見つめられるのって、一種の暴力に近いのだな、とぼんやり思いながら、彼と合っていた目を伏せた。

「マレウスだ。」
「え?」

目の前のイケメンが、ポツリと呟いた一言に、伏せていた目を上げた。彼は、ニコリと笑いもせずに、また口を開いた。

「マレウス・ドラコニアだ。」

そう言って、彼は先に廊下を歩き出した。