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- ナノ -
14歳


!ユニーク魔法ネタバレ有り






レオナくんがユニーク魔法を得たらしい。しかし、何故か周りの人は内容を話したがらないし、レオナくんはしばらく一歩も部屋を出なくなった。ご飯さえまともに食べていないそうだ。

「だから、今日のご飯だけ、申し訳ないけど届けてくれるかい?ちゃんと毒味は済んでるよ。」
「かしこまりました。」
「ほんと、心配だわ。もう三日も部屋を出ていないのよ。持って行ったご飯も絶対に手をつけないし…。」

キングスカラー家へ嫁いだばかりの王妃様は、ふぅとため息を吐いた。しかし、そこに使用人さんや他の臣下のような嫌らしさはなかった。この人は、ここに来て間もないというのに、レオナくんのことをきちんと分かろうとする人だった。たぶん、レオナくんはちょっと小うるさいと思っているだろうけど。

「すまないね、たぶん、僕や彼女が言ったところで、突っぱねられるだけだから。」
「そんな状態でしたら、私でもお力になれるか…でも心配なので行ってみます。」

私がそういうとファレナ様は嫌な顔をした。たぶん、なんて他人行儀なんだろう、とショックを受けている。しかし、以前みたいに口に出して文句を言うことはなかった。明確に、ファレナ様と私には上下関係があるからである。それはもちろんレオナくんともなんだけどね。

レオナくんの部屋の扉前に行き、念のためノックをした。しかし、やはりというかなんというか、返事はなかった。一応レオナくん、入るよ、と言ってから部屋に入ると、部屋は真っ暗だった。よく見ると、辺り一面がぐちゃぐちゃである。ジャリ、床から音がしたので見ると、何故か砂が落ちていた。今日は風が強くないから砂埃もあまり入らないだろうに、どうして。いると思っていたベッドにレオナくんはおらず、周りをキョロ、と見たけれど、どこにもいなかったので、部屋の奥の方に行くと、レオナくんが座り込んでいた。目はボーっと、どこかを見つめている。その目に光はない。レオナくんの綺麗なエメラルド色の目は、泥を被ったような、濁った色をしていた。

「レオナくん…?」
「……ああ、お前か……。」

レオナくんは私をちら、と見てまたすぐに目線を元に戻した。ずっと泣いていたのかもしれない、涙の跡が顔についていた。

「ど、どうしたの?何があったの?」
「……関係ないだろ。」
「関係ないことはないよ、みんな心配してるよ。私だって、心配して見にきたし…。ねえレオナくん、みんなに顔見せてあげて。」
「どうでも良い。」
「そ、そんなこと言わないでよ、王妃様だって、ファレナ様だってしんぱ、」
「関係ねぇって言ってんだろが!」

レオナくんは私に馬乗りになった。そして、両手を私の首に持っていく。ジワリと汗が出た。急いで逃げようとしたけれど、レオナくんの力には敵わず、ただ足だけがジタバタと動く。どんどん息が苦しくなってきた。

「なぁナマエ。俺と死んでくれよ。」
「っ、」
「生まれた順番で全て決まってるこの世界で、俺は何にも知らないで努力だけすればなんとかなると思って今まで頑張ってきた。呑気な兄貴なんかよりずっと勉強した。でも王は俺を認めなかった。俺が何をしたってあいつの口から出るのはファレナファレナファレナ。ついに王位も兄貴に譲ると正式に言われた。周りも兄貴は素晴らしいと持て囃し、俺のことは陰口ばかり。挙句の果てに俺が得たユニーク魔法はな、」

そういうとレオナくんは俺こそが飢え、と魔法の詠唱を始めた。未だに手は離してくれない。少ない気管で必死に息を取り込もうとして、ひゅ、ひゅ、と情けない声しか出せなかった。レオナくんの周りに砂埃が舞う。もしかして、先程床にあった砂は。
途端に、ピキピキ、と首の辺りで音が鳴った。肌が異様に渇くような感覚がし、やがてそれは痛みになってきた。どんどん呼吸も奪われていく。

「全て干上がらせて砂に変えちまう魔法なんだよ。」
「っ、ぐぅ、」
「皮肉だよなぁ…。サバンナの王子が、こんな魔法習得しちまうんだからよ。見ただろ、使用人の奴ら。俺を腫れ物に触るみたいに扱いやがる。」
「、ぁ、っ」
「どうせお前も、俺から離れていくんだろ。どうせ俺は一生王になれない。その上、恐ろしい魔法を持ってしまったんだからなぁ。お前にメリットは一ミリもねぇ。」
「っ、」
「もううんざりだ。こんな決まりきった世界なんて。」
「れ、レオ、っ、」

私は頭の中がボンヤリとしながら、腕を伸ばしてレオナくんの頬を触った。レオナくんの顔が、怒っているような、悲しんでいるような、色んな感情がごちゃごちゃになっている顔だったからだ。私はレオナくんがそんな顔をするたびに、よく両頬を引っ張っていたな、と頭の中で思い出していた。レオナくんの顔がどんどん強張っていく。目には光が戻ってきていた。砂埃がだんだんなくなっていく。残っていた砂は、パラパラ、と床に落ちていった。レオナくんは私の首を絞めていた手を離し、物凄い勢いで私起こした。すぐに私の頬を両手で抑えた。急に酸素を取り戻し、慣れずにげほげほ、と咳を繰り返す。心許ない呼吸が数度続いた。

「あ、ああ、あ、ナマエ、ナマエ、ナマエ。」
「う、けほ、ごほ、」
「あ、う、ああ、あああ、そんな、そんなつもりじゃっ、ナマエナマエナマエ!」
「れ、ごほ、レオナ、くん、はぁ、はぁ、だ、だいじょ、ぶ、だから」
「ほ、本当に?大丈夫?大丈夫なのか?だめだ、ああ、俺、ほんとに、」
「レオナ、くん、落ち着いて、ごほ、大丈夫、大丈夫だよ、」

こんな取り乱したレオナくんを見るのは初めてだった。落ち着かせるために抱きしめて、背中を撫でる。いつのまにかレオナくんの背中は硬く、広くなっていた。しっかりした男の子の背中だった。レオナくんも力強く私の体に腕を回した。抱きしめているというよりも、存在を確認しているような感じだった。

その後は、しばらくそうしたままだった。私が腕を離そうとすれば、レオナくんの腕がぎゅ、と強まる。仕方がないので私もそのままにするしかなかった。レオナくんはその後しばらく、ナマエ、ナマエ、ナマエと私の名を連呼するので、その間は頭を撫でた。窓から月明かりが漏れていて、私たちを照らした。

「ナマエ。」

レオナくんの尻尾が私の体に巻きついた。今までこんなことをされたことがなかったので体が強張る。少し体が離され、レオナくんがこちらを見た。
レオナくんはじっと私を見ていたけれど、目が合っているような、合っていないような、どこを見ているのか分からなかった。

「ナマエ、ナマエ、ナマエ。」

レオナくんが私の頬を触り、少し血が出ている首を触る。気がつくとまた背中が床にくっついていた。レオナくんが私を押し倒したのである。レオナくんはそのまますんすん、と私の首の辺りを嗅ぎ、べろ、と舌が這った。強張る私の頬に、またレオナくんの手が触れる。そのまますりすりとされた。
これが普段のじゃれあいではないことはなんとなく分かった。クラスの子が最近騒いでいる。私には縁遠い話だ、と思っていたけれど。

「ナマエ、」
「れ、レオナくん?」
「もうお前だけなんだよ。お前しか、」
「…………、」
「離れないでくれ、」


その夜のことはあまり覚えていない。