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- ナノ -
17歳


「ねぇ、レオナ様ったら酷いと思わない?」

レオナ様の許嫁が久しぶりに来たかと思ったら、わざわざ私の部屋まで来てのんびり寛ぎだした。
この人はレオナくんが13歳か14歳か……どちらだったかな。いやそれぐらいの年齢からの付き合いなので、必然的に私との付き合いも長くなっていた。
ふわふわとした長い髪に女の子らしい雰囲気、それにいつも良い匂いがする。しかし、レオナくんと同じ獣人なので、こんなにか弱そうな感じでも腕っぷしは強い。それをレオナくんに見せることは決してなかったが。

「もうNRCに行ってから一年は立つというのに、お手紙は何通来たと思う?」
「10通とかですか?」
「3通よ!3通!」

姫様は手をワナワナと震わせて嘆いた。元々レオナくんは姫様に対して塩対応だったのだが、NRCに行ってからはさらにそれが加速した。許嫁と良好な関係を築くのも王子の仕事であるのだが、元々王家に対するやる気がないのでそんなことをする必要もないのだろう。姫様も別に昔からレオナくんのことがすこぶる好きということもないらしいが、自分の家のために何とかレオナくんと仲良くしようと頑張って歩み寄ってくれていた。それだというのにあまりにも無碍に扱われるので、姫様は最近ストレスが溜まっては私の部屋に来るようになった。何故。とも思ったが、この城で歳が近い女となると私くらいである。だからであろう。

「手紙だから面倒なのかしらと思ってメッセージも送るのだけど、既読無視ばかり。たまに返事が来てもはいとかうんとか一言しかないのよ。私はほら、写真だって送るのに。」

私は逆に感動していた。適当な言葉を使いそうなものだが、メッセージを覗くときちんと敬語を使っている。変なところで自分の立場を分かっている……。本当によく分からない。

「まぁNRCは名門校で課題も多いと聞きます。部活も優秀な成績を修めているマジフト部に入部されましたし、きっとお忙しいだけですよ。」
「じゃあナマエもレオナ様と連絡は取れていないの?」
「……………そうですねー。」
「そうなの、側近が連絡取れないんだったら仕方がないわよね……。」

姫様はその後二時間くらい私の部屋に滞在し、最近面白かったこと、美味しかったものなどを取り止めもなく話し、最終的に向こうの従者に怒られてようやく城を出た。私は姫様を送り、王宮の長い廊下を歩き、自分の部屋を目指していた。

「ナマエさん、ちょうど良かった。郵便ですよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「またレオナ様ですよ。今月で四回目ですね。」
「……はははー。」

途中で郵便の係に呼ばれて手紙を受け取る。姫様が帰っていて良かった。本当に良かった。
手紙を受け取った後、小走りで部屋に向かった。

真っ黒な封筒はNRCで買える物なのだろう。たまにレオナくんは気が向いたらこうやって手紙を寄越してくれた。そうなのだ。姫様には嘘を吐いたが、私はレオナくんとこまめに連絡を取っている。姫様の手前言い辛かった。レオナくんは昔から自分の許嫁に心を開いていないらしく、姫様が手紙やメッセージを寄越しても基本的には無視である。酷い男だ。

レオナくんは今年二年生になったのだが、割と優秀な成績を修めているらしい。授業態度こそ悪いのでちょっと要注意、みたいなことを言われているみたいだが。まぁ留年しないのであれば良いだろう。
手紙はシンプルだった。

「今日食った食堂の飯が美味かった。副寮長が鬱陶しい。」

手紙は以上である。今の副寮長さんはいつまで持つだろうか。はぁ、とため息を吐いた。メッセージはそれだけだが、手紙には花が入っている。NRCに咲いているものだろう。レオナくんのお気に入りスポットが、植物園らしく、たまにこうやって気まぐれに花を入れてくるのだ。私は立ち上がって、ペンを取り出した。返事を書く。レオナくんと同じで一言で良いだろう。

レオナ様へ
お元気そうで何よりです。
ところで、姫様にお返事はされましたか?
姫様が返事が返ってこないと心配されていました。姫様にも一筆書いて、お花を添えてあげてください。
ナマエより




「突然電話をかけてきてそのままダンマリなんてどういうことですか?何かあったんですか?」
「…………。」
「レオナ様?」

夜中に急に電話が鳴ったかと思えばレオナくんだった。レオナくんは私がもしもし、と言ったっきり何も言わない。いや、何かちょっと唸っている時がある。何か言いたいことがあるのだろう。

「どうかされたんですか?」
「………久しぶりに手紙寄越したと思えば何だあれは。」
「え?あ〜…。この前姫様が来られて落ち込んでいましたので。」
「返事はするだろ、」
「たまにね。それもごくたまに。」
「…お前はあいつのこと気にしなくて良いだろ、別に。」
「そういうわけにいきませんよ!許嫁なんですから。」

そう言うとレオナくんはまた黙った。かと思えば、「もういいです。おやすみ。」と早口で言ってプツリと電話を切られた。
なんだ、反抗期継続中ですか。

「……。」

レオナくんが電話を切った後、しばらくぼうっとして、ふぅ、と小さくため息を吐いた。私だってこんなこと言いたいわけじゃないんだけどな。