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- ナノ -
あれ…?


※ただの下ネタ
※行為を匂わせる描写あり
※獣人やら妖精やらの妄想(捏造)あり





「あー……ゴム切らしてたな。」

レオナさんはポツリと言ったかと思えば、少し無言で私を見つめてきた。な、なんだろう……。整った顔に見つめられるのって緊張するんだよな。

「……なしでヤるのは……。」
「ダメですダメ!!!!!」
「チッ。分かってるよ、冗談に決まってるだろ。……今はな。」

ちょ、最後の一言は余計じゃない?と言いたかったが、そんなことは言えるはずもなく一人青くなっていると、レオナさんは携帯を取り出して誰かに電話をかけた。ワンコールほどで相手が出たようで、レオナさんが話し始める。

「おいラギー、ゴム買ってこい。」
「?!」

ら、ラギーだと?ゴム買ってこいだと?え、そういうのって人に頼むもん?確かに王族って人に着替えさせることに何の抵抗もないくらい従者に何でもやらせるって聞いたことあるけどさ……。そういう下のことまで……?

「違うもっと薄いの。いつも買ってきてるだろーが。ああそれだ。」

いつも買ってきてる?!ってことは毎回ゴムはラギーさんをパシって手に入れているということ?!ってことはラギーさんに高速でゴムがなくなっていることがバレているってこと?!何それめちゃくちゃ恥ずかしい。

「あ?当たり前だ付けるのは、すぐ妊娠しちまうだろうが。今はまだナマエの言うこと聞いてやってんだよ。これも卒業したら話は別だ。ああ。じゃあ部屋まで持ってこい。」

ピッとレオナさんは電話を切った後、ゴロリとベッドに転がり、くわぁとあくびをした。何かすごい恐ろしいことを言っていた気がするけど、もう聞かなかったことにしよう。私そもそも異世界人なんだからいつかは絶対元の世界に帰るわけだし……。最近レオナさんもツノ太郎もすごく未来の話をしてくるけど、私はここにずっといるわけではないっていうの……分かってるよね?ね?

……ってそういえばツノ太郎……。ゴムしてるっけ……。

「レオナさーん!買ってきたっすよー!」
「助かったラギー。ほらよ金。」
「もー、とりあえずいつもよりいっぱい買ってきたんで、あんま使いすぎないでくださいよ!ったく、買ってくる頻度多すぎなんスよ!サムさんに怪訝な目されるこっちの身にもなってください!」
「ああ……考えといてやるよ。」
「それ絶対使いすぎるやつ!」

ツノ太郎のことを考えだすと、ラギーさんがいつの間にか来ていたことも気付かなかった。ツノ太郎との行為の時を思い出していたけど、ツノ太郎がそういうのを装着しているのを見たことがない。そもそも二人とそ、そういうことをしている時は私にあんまり余裕がなく、記憶が朧げなのだ。
今日改めてレオナさんが言及したことによって、ゴムの存在を思い出したが、果たしてツノ太郎は……?なんだか心配になってきた。どうなんだろう。

「おいナマエ。」

あまりに考えすぎて背後にレオナさんが立っていたことに全く気付かなかった。すると、私の首回りにレオナさんの腕が巻きついてくる。皆さんが憧れる俺様系によるバックハグであるが、あまり良いものでもなかった。私に無視されたことに腹を立てたのか、腕の力が強い。痛い痛い痛い!

「今、お前何考えてた?」
「え、う、うーんと……………れ、レオナさんのこと!」

ピンチだと思って語尾にハートマークをつけんばかりの勢いでとびきり甘い声を出した。そして背後にいるレオナさんに目線を合わせる。レオナさんはフッと笑った。あまり良い笑顔ではない。ダラダラ汗を流す。

「ずるい女になってきたなぁ?ナマエも……。」
「そ、そうですかね……。ず、ずっとレオナさんといるから似てきましたかね?へ、へへへ……。」
「まぁどっちでも良い。今からは俺だけのことしか考えられないだろうからなぁ……?」

レオナさんがとっても良い笑顔をしていた。
ラギーさんごめんなさい。たぶんまたすぐに買いに行かされると思います。


────


「あの、シルバーさん。」
「……む?ナマエか?」

休み時間のちょっとした隙を狙い、お目当ての先輩を探していると、木陰でまぁメルヘンなことになっていた。眠っているシルバーさんの周りにリスやら蝶々やらがたくさんいた。物語のお姫様じゃん……。
ただ、今しかチャンスがなかったので、申し訳ないが少しずつ近付いていき、シルバーさんに声をかけさせてもらう。動物たちは私たちに気付くと、バタバタとどこかへ行ってしまった。

「すみません。お昼寝中に。ちょっと聞きたいことがあって。」
「構わない。というか、昼寝ではなく寝てしまっていただけだ。起こしてくれて助かった。」

シルバーさんは目を擦りながら立ち上がった。シルバーさんは、私が知る限りの中ではとてもとても心が綺麗な方で、この学園の生徒にこんな人がいるなんて到底信じられない。

「で、何だ聞きたいこととは。」

だからこんな人に聞く質問ではないと分かっているのだが。

「あ、あの…………。よ、妖精族って……その、…………………ですか。」
「ん?すまない、よく聞こえなかった。」
「妖精族って!避妊とかするんですか!」

思い切って聞いた私の声が木霊する。シルバーさんは目をまん丸としていた。私は自分が聞いたことが恥ずかしすぎて顔を真っ赤にした。何だってこの学園には女性がいないんだ。何で私は男の先輩にこんな話をしているのだ。いや、でもだってツノ太郎にはなんか聞いちゃいけないような気がするし、リリアさんには個人的に聞きたくないし、セベクになんて言ってみた日には私の鼓膜が死ぬだろう。だからと言って他に仲良しの妖精族なんていないし……。でも聞いておかないと後が怖い。これが原因で元の世界へ帰れないことへのきっかけになってしまうのは避けたい。
シルバー先輩は少し考えていたようだったが、口を開いた。

「基本的に妖精は一途だ。だから目をつけた者と一生添い遂げる。」
「え、そ、それはつまり……。」
「基本的に人間のような、避妊の概念はない。」
「あ、あわ……。」

覚悟はしていたが、恐ろしい言葉が帰ってきた。それはつまり、今までツノ太郎は……。私が青ざめているのを知ってか知らずか、シルバーさんは言葉を続けた。

「ただ、人間と妖精が行為に及んだとして、妊娠をすることはほとんどない。」
「え?!そうなんですか?!」
「そうだ。ある条件を満たせば話は別だが。」
「じょ、条件……?」

シルバーさんの綺麗なお目目がじっと私を見つめる。シルバーさんの目には必死な形相をしている私が映っていた。そりゃもう必死よ。昨日も途中でゴムが切れかけたのに続行しようとしたのをなんとかして止めたぐらいには必死よ。結局レオナさんが舌打ちしながらラギーさんをまたパシっていたけれど……。

「契りを結ぶことだ。もっと簡単に言うと、子を産み育てるという約束だな。」
「ほ、ほほー……。」
「妖精の方がやはり人間より上位な存在だ。妖精が出してきた契りに対し、人間が了承すればそこで契りが結ばれる。要するに、うんと言わなければ良いだけだ。」
「な、なるほど……。」
「逆に言うと、契りを結んでしまえばほぼ100%ということだ。」
「ひゃ、ひゃく。」

よ、妖精怖え。言葉だけで相手を縛ってしまえるのか。いや、合致しているのなら話は別なんだろうけど。愛し合っていて、周りも反対がなくて、という状況だったらお互い幸せなんだろうなぁ。

「ナマエ、すまない。次の授業は移動教室だったのを思い出した。今はもう時間がない。」
「あ、いえいえこちらこそ、変な話してすみません。私も授業なので、もう行きますね。」

シルバーさんの授業は、私と逆方向だったので、彼からくるりと背を向ける。それにしても、結構有益なことを聞いた。とにかく、ツノ太郎からの返事に「yes」って言わなければ良いってことだろう。いくらワカメな私でも、流石に大丈夫だと思う、それは。

「あ、でも妖精によってはあの手この手で了承を取ろうとする者もいるから気をつけた方が良い……ってもういないな。しかし、ナマエは何故あのようなことを言ってきたのだろうか……。」


────


「ナマエ。ナマエ?」
「…………うぁ。」
「ふむ、意識はあるようだが上の空だな。……よし。」

ある程度行為に及び、こうやってナマエの状態を確認した後、僕にはやることがある。ナマエの頬をそうっと撫でると、彼女は少し身じろいだ。

「ナマエ。子は欲しいか。」
「………………………………。」
「ナマエ、返事をしろ。早く。」
「………………………………………や、」

小さく呟いた声に、ふぅ、と深くため息を吐いた。まだ無理なようだ。何回も何回もやっているというのに、まだ契りが結べない。意識朦朧の時を狙っているというのに、恐るべきかな人の子の本能というものは。ナマエにとってまだ早いのは理解しているが……。

「どうして嫌なんだ?まだ早いというのか?それとも……。」
「…………………。」
「………………キングスカラーの子が欲しいというのか………………?」

自分で呟いて、急に腑が煮えくりかえってきた。ぼうっとしているナマエの首を掴んで絞めてやりたい衝動に駆られ、そっとナマエの首を触ると、ナマエは本能的か、ビク、と体が動いた。上の空だというのに、人の子の本能というものも侮れない。急に冷静になってきたので、手を滑らせるだけにした。

「……何故拒む?僕たちは“愛し合って"いるだろうに。」
「…………か、帰る、から……………。」

潜在的な意識が残っているのだろう。普段ナマエが決して僕に言わないようなことを言ってきた。行為の終わり頃にナマエが言う唯一の本音を聞くのは、僕は楽しみでもあったが、こういう不快な言葉を聞く瞬間でもあった。

「はぁ……まだ帰れると思っているのか……。」
「んん…………。」
「…………じゃあ元の世界に戻れなかったら?」

小さな声で呟く。ああ、そうだ。その手があったな。
考えているうちに自然と口角が上がる。ナマエはぼうっとしながら、不思議そうに僕を見つめていた。それにしても、強い魔力に当てられすぎると人の子はこうなってしまうのだな。毎回何故こんなに意識が朦朧とするのだろうと考えていたのだが……、ああ、やはり人間は面白い。

「元の世界に戻れなかったら、……その時は僕の子を産んでくれるな?」
「……戻れない……。」
「そうだ。その時はお前には身内もおらず、拠り所もいない。……僕だけを除いてな。」

そういうと、ナマエはポロリと涙をこぼした。そこで何故泣く。理解できない。思わず顔を顰めてしまった。

「どうだ?早く答えろ。」
「…………その時は、そうする…………。」
「……そうか!そうか……ハハハハハ!」

これで"約束"は結ばれた。今すぐにはできないが、実際にナマエが帰れないとなると……。ああ、楽しみだ。
こうなれば元の世界への目は全て摘んでおこう。明日からまた慌ただしくなる。そのためには、まずキングスカラーより早く動かねばならない。奴も奴で、元の世界へ戻る術を探しているようだしな……。

「ん…….ぁれ、つの、たろ……?」
「ああ、意識がはっきりしてきたか、ナマエ。」
「え……気絶してた……?」
「気絶はしていない。意識が朦朧としていたようだったが。」
「そ、そっか……。へ、変なことしてない……よね?」
「いや?何も変なことはしていなかったぞ。ただただお前は何をしていても愛らしいな、とは思った。」

そう言ってナマエに口付ける。僕と約束したとは露知らず、ナマエは相変わらずぎこちなく目を固く瞑って僕を受け入れていた。ハハ、本当に愛らしい。何回も何回も、……他の男ともやっているくせに。

「本当に愛らしいな、ナマエは。」

愚かなくらいな。