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遭遇する


「まぁ何というか……。また美味しいもの食べましょうね、なまえちゃん。」

嵐くんは相変わらずの綺麗なお顔を微笑ませた後、私と別れた。何とパフェは奢りだった。神だ。あの人こそ神だったんだ。みかとパフェ食べに行ってもだいたい割り勘だ。というかみかが貧乏すぎてパフェを食べに行けないというのが現実である。しかも嵐くんのお会計の仕方はかなりスマートだった。典型的なトイレに行ってる間に〜っていうやつだ。やっぱりあの人は神だ。そう思いながら私も帰路についていると、目の前に見覚えのあるピンク色の髪をした長身の男性が歩いていた。しかも夢ノ咲の制服だ。

「斎宮先輩。」
「うおっ、みょうじ、急に背後に立たないでくれ、びっくりするじゃないかっ! 」
「ご、ごめんなさい。そんなビビられるとは……。あ、今日は肉じゃがですか? 」
「か、勝手に人の家の買い物袋の中身を見るな! 」

そんなにカリカリしなくても。最近仲良くなってから思ったことなのだが、斎宮先輩は少し神経質すぎる所があると思う。いや、これでもだいぶと彼の懐に入れるようになったとは思うのだけれど。しかし肉じゃがか。

「……いいなぁ。」
「む。何だ、また今日もご両親は帰るのが遅いのか。」
「は。い、いえ。気にせずに。」
「僕は別に構わない。こういう料理の時はいつも少し余ってしまうからね。影片も貴様が来ればきっと喜ぶだろう。」
「え、みかが? みかが喜ぶわけないじゃないですか。」

みかは斎宮先輩が好きなのだから、と言いそうになったのをぐっと押し込んだ。危ない危ない。こういうことは本人たちの問題なのだから良くない。ただ、久しぶりに回った自分の頭に感謝したい。みか、どうだ。私だってたまには気が効くのだぞ。

「……? 影片は必ず喜ぶと思うが。というか、君も影片に会いたいだろう? 」
「え? 別にそんなことないですけど……。毎朝一緒に登校してるし……。何故急にそんなことを。」
「何故って、君と影片はそういう仲なのだろう? 」

は。私は口から息を吐き出すような音を出した。何だって? 周りがガラガラ、と崩れ落ちるような気分であった。斎宮先輩の表情は至極真面目だ。というか、彼は人をからかうような性格ではない。だとしても、急にそんなことを言うなんて、どういうことなのだ? きっと違う、斎宮先輩の言っているそういう仲というのは、私の思っているものと違う。

「せ、先輩。」
「どうした。」
「そ、そ、そういう仲というのは……。」
「そういう仲って、つまり、恋仲だということなのだけれど。」

ピシャーーーーーン。雷が落ちた。ような気分だ。え?まじか? 嘘だ。何を勘違いしているの先輩。私がみかを好きだって誤解するならともかく、みかが私を好きだなんて、そんな。そんな馬鹿な。そんな……。だってみかは、

ー私が影片くんのこと好きだって知ってるよね。
ーそれなのに空気読まずに出しゃばんないでよ。
ーただの友達なんでしょう?




ーあんな、俺、なまえちゃんのこと……。



「止めてください。」
「みょうじ? 」
「私とみかはそんなんじゃないです。今日は忙しいので、ご飯も大丈夫です。すみません、気を遣わせちゃって。」
「おい、みょうじ。」

斎宮先輩が私を呼んだが、そんなことに構ってられなかった。私は何をしているんだ。また誤解させた。何を、本当に何をしているのか。応援するって、他でもないみかに言ったのに。でも、どうしたら良いんだろう。どうしたらーー。


家に帰って電気を点けた。相変わらずしんとしてて寒い部屋だ。携帯を取り出すと、今日も遅くなるから、と母から連絡が入っていた。これはいつものことである。そのまま、私はアドレス帳を開いた。カ行のページを開くと、すぐに見つけることができる。部屋がひんやりしているせいか、手がかじかんでうまく操作ができなかった。


『あれ、なまえちゃん。突然電話なんか……何かあったん? 』
「あのさ、みか。」

どうすれば良いのかなんて聞かれても

「明日から一緒に登校できない。」

私には良い方法が思いつかない。