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思い出す


まず大前提として、みかと私は腐れ縁というか、何というか。幼馴染ってわけでもないんですけど、まぁ小中でほとんど同じクラスだったんですよ。初めて会ったときはそれはそれは人見知りされて。みかは施設育ちだったから、施設の子とはよく話すんですけど、そうじゃない子は緊張しちゃうみたいだったんですよね。でも私の小さい時なんてまぁ呑気だったから、そんなこと気にせずにガンガンいってたんですよ。友だちになりたかったんですよね。前髪は長かったんであんまり目立たなかったんですけど、目がすごく綺麗で印象的で、名前だけ見て、女の子なのかな?って思ってて。普通小学校の時の女子なんて男子に人見知りするじゃないですか。だから周りの女子なんて男子にガンガンいかないわけですよ。でも分かんなかったから毎日鬱陶しいくらい話しかけて、気付いた時にはみかがべったりになってくれたんですよ。もうそんな仲良くなってきたら男だって気付いてたんですけどね。でも仲良くなれて嬉しかったんです。本人には言ったことないですけど、親友とも思ってますよ。男女を超えた友情ってやつです。でも、そういうのは、認めてくれない人もいるわけですよ。

「なまえちゃんって影片くんのこと好きなの?」
「え?好きだけど何で?」

中学……1年だったかな、2年だったかな。ちょっと忘れちゃったけど、そのくらいの時に、クラスのマドンナ的存在だった子にそう聞かれたんです。めちゃくちゃかわいいんですよ、その子。同じ学年の子はたぶんみんなその子のこと好きだったんじゃにないかなってくらい。その子とは中学入った時くらいから仲良くしてて、よく休み時間とかに遊んでたんです。みかは休み時間になったらほとんど私のところへ来るから、よくその子とも話すようになったんですよね。そんな時にそんなことを聞かれたんです。

「好きって……、恋愛的な意味で?」
「え!?そ、そんなわけないじゃん!」

そんなこと考えたこともなかったんですよ、当時はね。でもやっぱり中学生だったから、みーんな私とみかがそういう関係なのだと思っていたらしいんですよ。その子から伝えられたんです。

「あのね、なまえちゃん。内緒にして欲しいんだけど……。」
「な、なに?」
「私ね、影片くんのことが好きみたい……。」

そう言われた時に、びっくりしすぎて固まっちゃったんですよ。だって今までみかに関してそんな話聞いたことなかったから。ほら、小学校の時って早く走れる人がかっこいいみたいな感じだったから、みかってそうでもなかったし……。確かに中学生になってから、物凄くかっこよくなってきたんですよ。元々綺麗な顔だったんですけど、可愛さがあったのがだんだん綺麗になっていってるみたいな。分かります?

「ねぇ、影片くんて好きな人いないのかな?」
「え?さ、さぁ。聞いたことないけど……。」
「お願い、なまえちゃん!聞いてきてよ!」

友だちにそんなこと言われちゃったら聞かないわけにはいかないじゃないですか。それでみかに聞かなくちゃな〜ってずっと思ってたんです。で、みかと一緒に帰ってる時に「みかって好きな子いないの? 」って聞いたんですよ。その子が探りを入れて欲しいって言ったから。そしたらみか、目を丸くしたかと思えば顔が真っ赤になって。あの顔は面白かったなぁ。あ、すいません。それでですね、

「え、ええ?す、好きな人?な、何で。」
「最近みんなみかのことかっこいいって言ってるよ!モテ期かな??!」
「え?あ、ああ……そういう……。そんなことないよ〜オレ、背高くないし。目標としてる人の足元にも及ばんし……。」
「ああイツキシュウとかいう人?いやいや、また違ったジャンルでしょ!私はみかの顔の方がかっこいいと思うよ〜。」

……あ、あのですね。あの時はそう言うしかなかったというか。なのでちょっと睨まないでいただきたいんですけど、ええっと……。まぁ知り合いになる前だし中学生の時のことなんで許してください。ははは……。ま、まぁそういう話をしてたんですよ、みかに。あの子がみかに告白するかもしれないから、今から好きな人のこと聞いておこうと思って。そうしたらなんですけど。

「……なまえちゃんは好きな人おらんの?」
「え。」
「なまえちゃんもさ、この人好きやな〜ってなるような、大事な人。おらんの?」

考えてもなかったような質問をみかにされたんですよね。そもそも私は当時恋愛のれの字もない人で、友だちがあの子のことが好き、隣のクラスの子と付き合った、とか聞いてたら大人だな〜ってどこか他人事のように感じてたというか。だからみかの返答にすぐ答えられなくって。ポカンとしてる時にみかが私を見て言ったんです。

「あのな、おれ、なまえちゃんのこと好き。」
「……え。」
「なまえちゃんも一緒の気持ちやったら嬉しい。」
「…………。」

あまりに突然のことで、言葉が返せなくて。黙り込んじゃったんですよ。その間私は友だちに探りを入れて欲しいとか言われてたのをすっかり忘れてましたね。好きって、え?どういう?みたいな。だってみかってずっと一緒にいたんですよ。私的に男の子だって、思ったことなくて。そしたらみかが笑って言ったんですよ。

「ふ、はは。なまえちゃんめっちゃおもろい顔してる!」
「は?」
「ご、ごめんなぁ、見たことないくらい難しい顔してるから……、はは、あはは!」
「ちょ、笑わないでよ!恥ずかしいから!」
「せやんな、はは、そんな顔させたんおれやしなぁ。ごめん突然。……返事とかは今すぐいらんし、でもちょっと考えて欲しい。」
「え……。」
「おれも別にふざけて言ったんちゃうよ。じゃあ、また明日……。」

そう言ってみかは走って行って。私は置いてけぼりですよ。明日の登校もどうしようって迷ったけど、いつも通りみかが家の前まで来たから一緒に行きました。まぁその間は昨日は何だったの?てくらいその話題には全く触れず、いつも通り喋って。みかって優しいんだなぁってなんとなく思いながら学校に着いた時です。

「おはよー。」

いつも通り教室に入ったら、みんなシンとしてこっち見てたんですよ。何だろうと思ってたら、クラスのお調子者の男子がニヤニヤしながらこっちに来て。やだな、って思ってたら、

「今日も一緒に登校ですかぁ〜?おアツイですね〜」
「え?そうだけど……何?」
「とぼけちゃってまぁー!昨日影片がなまえに告白してるとこ見たんだよ!」
「……え。」
「まーいにち一緒にいるもんな!付き合ってんだろ?ラブラブぅー!」
「いいなー!影片!俺も彼女が欲しいよぉー!」

まぁよくあることですよ。中学生だったんで。あとみかって、男子のことちょっと苦手だから、他の男子からしたらちょっとちょっかい出されるっていうか。それで結構面白がられたんですよ。で、突然だったのでびっくりして何も言えなかったんですけど、否定しなきゃって、思った時だったんですよ。

「なまえちゃん。ちょっと良い?」

一緒のクラスの女子が何人か声かけてきたんですよ。その真ん中にあの子がいて。あ、あの子はその時何も言わなかったんですけど、なんかちょっと怒った顔してて。嫌な予感するな、って思ったけどちょっと良い?って言われたら着いていくしかないじゃないですか。だからそのまま着いて行ったんですよ。

「どういうこと?」

着いてったら、一番最初に口を開いたのは、クラスでも一番気の強い子で。あ、友だちだったんですけど。もう明らか怒ってるんですよ。だから戸惑っちゃって。

「どうって……何が?」
「影片くんのことだよ!」
「付き合ってるってどういうこと?」
「この子の気持ち知ってたんだよね?」
「それなのに黙ってたってこと?」

口々に、その周りの子が口を開いていくんですよ。まぁ恐ろしかったですよ。やっぱこういう時の女子ってね、すごいですよ。でも付き合ってないし、告白されたの昨日だし、だから言い返そうと思って。

「つ、付き合ってないよ。」
「じゃあ何であんな噂立ってんの?」
「そ、それは、昨日告白されただけで、私は何も言ってないし……。」
「はぁ?私は何も言ってなくて向こうが言ってきただけなんですってこと?」
「何それ余裕だねー。」
「そもそも前から気になってたんだよね、この子が影片くんのこと好きって知ってたのに、ずっと一緒に帰ってるし。」
「そうそう、ていうか影片くんのこと好きじゃないなら空気読まずにでしゃばんないでくんない?」
「ていうかなまえちゃんと影片くんじゃ全然釣り合わなくない?いつも一緒にいるけどさぁ。差がすごいっていうか。」
「あ、そういえば今日国語で何か習ったよー。確か、月とすっぽん?」

そういうと女の子たちがキャハハハハって笑うんですよね。月とすっぽんって、言い得て妙ですよね。……斎宮先輩、顔すごいですよ。まぁ中学生ってそういう世界ですよ。私も何回か見てきたし。でもその時は流石に辛かったですねー。早くここから抜け出したいって何回も思いましたよ。何が怖いって、仲良かったはずのあの子が、一言も発してないんですけど、じっ……と私を睨むように見つめてるんですよね。怖いですよ。恋愛が絡むと人は怖い。

「影片くんとは、ただの友だちなんでしょう?」
「それとも何、好きなの?」

もうおんなじようなこと何回も言われて、疲れ果てちゃったんですよね。だからもう言ったんですよ。

「違う!みかなんか、好きじゃない!」

急に大きな声出して、今まで威勢の良かった女子たちが目を丸くしちゃって。あの時は最高に気分が良かったですよ。急に声発さなくなっちゃって。その時までは。

「何してんの?」

みかの声が聞こえた、と思えば側に立ってて。女子たちみんな更に驚いて。あの、とか、その、とか言ってるんですよ。私もびっくりしましたよ。みかが能面みたいな顔をしてたんで。

「か、影片くん、聞いて?」
「んぁーなまえちゃん数学の宿題やってきた?おれ忘れてんよー。見せて!」
「え。」

能面みたいな顔してると思えば、みかが、私の方に向かって、微笑んでた。他の女の子なんて見えてないみたいな感じだったら、みんなみかに声かけたんですけど、

「か、影、」
「あのさ、おれ今なまえちゃんと喋ってんねんやんかぁ。何かある?」

みかの声がその時すっごく通ってたのを覚えてます。そうしたら、さっきまで強かった女子たちが一気に青ざめて。あの子が「行こ、」って言ったら鶴の一声でどっか行きました。結局あの子がリーダー格だったんですよね。でも私はその子たちがどこかへ行ったことよりも、みかにさっき言ったこと聞かれたんじゃないかって思ってバクバクしてたんですよ。みかと顔合わせられなくなって、下向いてました。でもなにか言わなくちゃって思って。

「み、みか」
「なまえちゃん。ごめんなぁ。」
「みか……?」
「あの好きってやつ、恋人になって欲しいって意味じゃないねん!」
「え。」
「本気じゃないよ、やのに誤解されてこんなん……ほんまごめんなぁ。」

みかが、ニヘラって、笑って。私はバカですけど、すぐわかりましたよ。この人は私のために嘘を吐いてるって。

「み、みか。」
「あ!でもこれからも一緒にはおってな?おれ、なまえちゃんのこと大事な友だちって思ってるから。」
「み、」
「ていうかもう授業始まるやん!なまえちゃん数学のノート見せて!おれあの先生に目ぇつけられてんねん!
あの人おっきい声出すから苦手やわぁ。」

みかが、私の話を聞こうとせず、授業に行こうって言うから、何にも言えなくて。ただただみかの後ろを着いていくしかなかったんです。でも、私はみかの顔が頭から離れなくなりました。笑ってるんですけど、寂しいような顔してるんですよ。この顔をさせてるのは私なんだな、って分かったんです。何でこうなったんだろうっていっぱい考えましたよ。でもどう考えても、私があの時、ええと、みかに好きって言われた時にすぐに答えが出せなくて何も言わなかったからだって思って。あの子がみかのこと好きだって知ってたのに断らなかったから、色んな人に誤解されて、結局みかのこと傷つけて。ダメだなぁって思ったんですよ。だから、傷つけたからこれ以上一緒にいられないって思ったから、みかにもう明日から一緒に登校できないって言ったんですよ。それなのに、みかはやだって言って泣いて……結局登校はしましたし、今までも一緒にはいたんですけど。

でも、それじゃまたおんなじことを繰り返すな、って思ったんですよ。みかが、今は斎宮先輩のこと好きだって分かったから。今度こそみかには幸せになって欲しいんです。だから、私が誤解されてはダメなんですよ。そう思ってみかと距離を取ろうと思ったら、何か拗れちゃって。よく分かんないです、もう。って感じなんですけど、分かりましたか?

「……とりあえず今、君が物凄く誤解をしていることはよく分かったのだよ。」

え、斎宮先輩、話聞いてました?