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犯人は誰、だなんて聞かなくても分かった。私が手にしているものが見えているはずなのに、レオは一つも表情を崩さずに微笑んでいた。それが何だか不気味で、私もこれはレオがやったの、といつもみたいに言う気になれなかった。

『え、それもうバレてるんじゃないの? 』

電話口で高校時代の旧友である嵐くんが心配そうな声色でそう言った。やっぱりそうなのかなぁ、と零せば、電話口の向こうからため息が聞こえて来た。呆れられるのも当然だと思う。

『っていうかその後浮気相手とは会ったの? 』
「いや、レオその後仕事行ったんだけど、流石に何か気持ち悪くて会う気分ではなくなりまして……。」
『もう、そろそろ止めなさいよね。どっちにも失礼じゃないのよ。』
「そ、そうだよね。何とかしようと思う。……だけどさ、この前浮気相手に、もうこの関係を終わりにしようって言ったら外で泣きつかれてしまって、別れるに別れられないっていう……。」
『それでも心を鬼にするのが真の優しさでしょう? 今のなまえちゃんは自分がかわいいだけよ。』
「う、つ、突き刺さる……! 」

相変わらず嵐くんは優しいようで厳しい。私が感じている罪悪感をピンポイントで狙ってくるのだ。私が浮気を始めてすぐの頃、あまりの罪悪感で頭の中が占められ、苦しんでいたのをすぐに見抜き、何かあったの、と聞いてきたのも彼だった。私は彼にそう問われて、洗いざらい全てを話した。話の概要を聞いた嵐くんは、その時も私を叱りつけた。私はただただ聞いていただけだったが、ものすごくそれが嬉しかったのを覚えている。たぶん、誰かに叱って欲しかったのだ。こうやって話を聞いて、叱ってくれることが、私には必要だったのだと思う。それ以来、何かにつけて私は嵐くんに連絡をしては話を聞いてもらっていた。

『にしても、すごいわね。いつもデートとかで着ていくワンピースビリビリにしてたわけでしょ? 』
「そうだね。あれお気に入りだったんだけどなぁ。」
『それ王様も相当きてるってことよね? もう謝っちゃいなさいよ。それで、浮気相手とはもう会わない。これで完璧でしょ。』
「それが簡単に出来たら苦労しないんだけど……。でもそうだね、それぐらいしないといけないよね。」
『そうよ、酷い女でいいじゃないのよ。どうせ王様と別れる気もないんだから。って、ごめん、何か別の人から電話かかってきてるみたいだから切るわね。』
「あ、うん、ごめんね急に。」

急に切れた電話に、静まり返る部屋。今朝のことを思い返した。レオが何を考えているかはさっぱり分からないが、きっと彼が怒っていることは確かなのだろう。それならば、私がすることはただ一つ。彼に謝ること、全てを話すこと。それで、もしかしたら最悪の場合別れることになるかもしれなくなっても、仕方がないのかもしれない。静まり返る部屋の中で、私は携帯を握りしめていた。レオに、伝えなくては。


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「急に電話なんて、どうしたのよ。」
『別に! 久しぶりだな、ナル! 元気か! 」

久しぶりに聞く明るい声に、何故このタイミングにかけてくるのだ、と溜息が漏れる。普段連絡なんて全くしてこない癖に、一体どうしたというのだろうか、

『まぁちょっと話すことあるんだけど、今大丈夫だよな。』

疑問系ではないその問いに、ああ、もしかしたらあたしはもうなまえちゃんに会えないかもなぁと、何となく思った。