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毒がしたたる幸福


「今日、話したいことがあるの。」

きっと今日も忙しいだろうけど。と小声で付け足す。レオはじっと私の顔を見ていた。レオの目は、笑っている時はとろけたような瞳をしておりとても可愛い。しかし、こうやって普通に過ごしている時は、その大きな目がなにかを見透かしているような妙な存在感がある。少し目が合ったのを、私はすぐに逸らした。

「いーよ。今日は早く終わらせる。夜になまえの家また寄る。」

レオはそう言って今日もまともな荷物一つも持たずに鼻歌交じりで出かけていった。最近新曲を作っているらしいのでその関係だろう。「らしい」というのは、レオから聞いた情報ではなくテレビの情報だからだ。あのワンピースがビリビリに破かれた日からはや数日。特にレオとの関係は変わらず、相変わらず私はほったらかしにされていた。何故あんなことをしたのか分からない。もし、私の浮気に気付いたとしたら、何か言ってくれれば楽なのに。私を責めれば良いのに。なぜか何もアクションをしてこなかった。
ただの奇行だったのか。いや、だとしても他の服ではなくなぜあの服だったのか。
嵐くんに相談しようと思っても、ここ最近忙しくなってきたらしく、しばらく連絡できないの、とこの前連絡がきた。仕方がない。knightsも一時期に比べると格段に仕事が増えている。

(モヤモヤしても仕方がない)

携帯を手に取って、しばらくかけていなかった連絡先のページをタップする。ワンピースを破られた日から、念のため一切の連絡をしないようにしていた、件の浮気相手である。

今日、彼氏に全部話そうと思っている。

メッセージを打ち込み、送信した。ピコ、と送信音が部屋に響く。レオに全てを話してしまったらどうなるだろうか。あきれられて、別れよう、って言われるのかな。いつも私に向けてくれた、やわらかくて優しい笑顔はもう見れないんだろうか。自業自得という言葉が脳内を占める。

そうか。分かった。またどうなったか教えてくれ。

携帯がまた音を鳴らした。画面を覗くと、浮気相手である彼からだった。いつもこうやってすぐに返信をくれる。何かあった時にすぐに連絡をくれるし、すぐに会ってくれる。私は確かにこの人に愛されている、と実感することができたから、この人から離れられなかった。でも、レオにバレてしまったのなら。

もう終わりにしよう。

そう打って、送信ボタンをタップしようとしたが、少しためらってしまう。レオがいなくて、辛い時にいつも相談に乗ってくれて、そばにいてくれたこの人を、私は果たして手放すことができるのだろうか。レオが、この先私が全てを話したとして、私と一緒にいてくれる確証はないし、このまま状況がよくなることは考えにくい。レオは、作曲が大好きだから、すぐにそちらの世界へ行こうとする。私なんて二の次だ。昔は、そんな彼が大好きだったけど。

(レオに、話してから送ろう。)

メッセージは送らず、携帯を机の上に置いた。