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嘘つきは泥棒の始まり




真緒くんと同棲してからだいぶ経ったと、今朝カレンダーをめくりながら思った。4月1日、と書かれたカレンダーをぼんやりと見る。そういえば、今日ってエイプリルフールなのか。
昔はこういうイベントにここぞとばかりに乗っかって、みんなでふざけたものだな、と昔のことを思い出しながら笑う。クラスメイトであった明星くんや遊木くんがふざけすぎて、氷鷹くんがとても怒っていたような気がする。あんなことがなければ、今でも連絡とっていたんだろう。何となくみんなに会いたくなってきた。でも、勝手に友人と連絡を取れば、ここ最近真緒くんがやたら心配するようになった。あまり何もしない方がいいだろう。それにしてもエイプリルフールか。……たまには何かイタズラでもしようかな。


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「ただいま。」
「おかえり、真緒くん。」
「腹減っただろ? 何か食べたいもんある? 」
「今日は特に。ねえ、真緒くん。」

真緒くんが帰宅してきて、ワクワクするような、ドキドキするような、子どもがイタズラを考えついた時の高揚感と罪悪感が混ざり合って、ちょっとニヤニヤしてしまった。こんなワクワクしたのは久しぶりだ。真緒くんどんな顔するんだろうな。

「私、ここから出ようと思うの。」
「……は? 」

真緒くんがすごく驚いているのが分かった。やった、完全に信じ込んでいる。真緒くん、忙しすぎてエイプリルフールの存在完全に忘れているんだろうな。

「な、え……。」
「ずっと考えていたんだけどね、このまま真緒くんに頼るだけじゃ駄目かなぁって思って。そうするには家から出るべきだなって思ったの。……なんて、」
「頼ってもいいんだよ! 」

冗談だよ、そう言おうと思っていたが、言うことができなくなった。真緒くんが大きな声で言った一言で遮られたからだ。真緒くんは、私の肩を掴む。ギチギチと強い力で掴まれた、痛い。

「なぁ、何が不満なんだよ? 俺はなまえに何でもしてきたつもりなんだ。でも何か足りないもんでもあったのか?」
「い、いや、真緒く」
「一人暮らし? 出来るわけないだろ。お前一人で何が出来るんだよ。嫌だ、嫌だ。なまえが側にいないと心配なんだよ。不安で不安で仕方ないんだよ。俺は、お前が側にいてくれないと駄目なんだよ。」
「ま、真緒くん。聞いて。ちゃんと聞いて欲しい。」

真緒くんの掴む手の力が強すぎて、顔を歪める。そうすると、ハッとした真緒くんはすぐに手を離して、ごめん、と呟いた。私は真緒くんの手を取った。震えている。まさかこんなに信じてしまうなんて。

「……ごめんね、真緒くん。今のは嘘なの。」
「嘘……? 」
「うん。今日ってエイプリルフールだな、って思って、何か嘘をつこうと思ったんだけど。……こんなことになるなんて。ごめんね、真緒くん。」

そう言うと、真緒くんは合点が言ったようにああ、と言って、安心したようにへにゃりと笑った。その表情は、いつもの真緒くんだった。

「あーびっくりした……。あんま変な嘘吐くなよな〜? 心臓に悪い……。 」
「わたしが真緒くんの側から離れるわけないじゃん。真緒くんがいないと駄目なのに。」
「なまえ……。」

真緒くんは、私を抱きしめてきた。暖かい。こんなに優しい人を傷つけるなんて、次はみんなが笑えるような嘘を吐かないとなぁ。


「……なまえは俺なしじゃ生きれないもんな。」
「ははは、大袈裟に言うとそうだねぇ。」

その時の真緒くんはどんな表情をしていたのだろうか、私には知る由もない。