86

沖田総司side



「健康だろうが余命いくばくだろうが、私のやることは変わらないよ」

「わかってる。それが香耶さんだもんね」

「それどういう意味?」



わかってるよ。

香耶さんの覚悟は、自分の命まで懸けられるほどのものだ。
僕にだって理解できる。だって僕も同じものを持っているから。

ならば、僕にできることは、彼女の前に立ちふさがる敵を斬って、
無茶しそうになったら、横でそっと手をつないであげることだけ。





「健康な者には些細な病でも、君がかかると一大事になりかねない。君の身体は常に戦っている状態だからな」

「じゃあ、香耶さんが疲れやすかったり、眠ってばかりいたり、風邪が治りにくかったりしたのも……」

松本先生は難しい顔をしてうなずいた。

「……疲労と貧血の薬を出しておこう。今は病みあがりだから体力も落ちているし、絶対安静にな」

「絶対安静〜? 散歩もだめ?」

「私が許可を出すまで外出はするな。それから沖田君、君は絶対に彼女に無理をさせてはいかんぞ」

「え、僕が?」

僕が大事な香耶さんをどうにかする?
僕達を残し静かに部屋を出て行く松本先生。
医療道具を抱えてふすまに手をかけたところで。

「夜のほうも、許可を出すまで控えておきなさいと言うことだ」

「ぶっ!」

「ええっ!?」

そっち!?
去り際に爆弾を落としていったのだった。



確かに覚悟するって言った。

例え香耶さんが寝たきりになったって、僕が一生面倒見る。
彼女の病を治せるなら、僕はなんでもする。
香耶さんがそうしてるように、僕だって幸せになる努力をするって決めた。

けれど。

「……香耶さん」

「あはは、まだ暫らくは禁欲生活だね?」

「うそだ! 僕が今までどれだけ我慢してきたと思ってるんだよ」


無理やり恋仲になって一年。やっと想いが通じ合って三日目。


「私からはごめんとしか言いようが無いよ」

「……べつに香耶さんは悪くないけどさ…」

僕はかくりとうなだれる。
ここに来て、思いもよらない試練が待ち受けていることに気づいたのだった。

| pagelist |

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -