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月神香耶side



豊臣秀吉が鷹狩りの帰りに立ち寄った近江国の寺で、咽の渇いていた秀吉に寺小姓が、一杯目にぬるめの茶を。二杯目にやや熱い茶を。三杯目に熱い茶を出した。最初の茶で咽の渇きを癒してもらい、熱い茶で味わっていただこうという心配り。これに感じ入った秀吉は、この寺小姓を家来として召抱える。

これがのちに王佐の才といわれるまでになる秀吉の忠臣、石田三成の逸話である。



佐吉と名乗ったその少年。たとえ石田三成とは別人だったとしても、怜悧な顔立ちに理知に輝く瞳は将来が非常に楽しみと思わせる。

というわけで、豊臣さんに相談だ。



「豊臣さん豊臣さん。佐吉くん連れていこーよ。あの子将来すごい武将になるよ。たぶん婆娑羅も発現するよ」

「……そうか」

「だまされちゃだめだよー、秀吉さん。香耶の言う婆娑羅うんぬんはあてずっぽうだからね」

「ちょっと、茶々入れないでよ半兵衛君」

間違ってないけどね。
でも大谷吉継が婆娑羅持ちなら、十中八九石田三成も婆娑羅持ちになると思うんだ。

「クク……うぬが連れ帰らずとも、香耶が攫って行くだろうな」

「仕方あるまい……」

「こらそこ」

否定はまったくしないけど!
豊臣さんが要らないなら私が育てる。あんな逸材埋もれさせてなるものか。

結果、豊臣さんの鶴の一声で、佐吉君はめでたく豊臣さんの小姓と相成りました。
さっすが太閤さん。……まだ地位的には太閤(要は、自分の子に関白をゆずった人のこと)じゃないけど。



「ってわけなので佐吉くん。豊臣さんの下でいっぱい勉強して立派な大人になってください」

「かしこまりました香耶様!」

香耶さま!? おいおい石田三成に様付けで呼ばれる一般人がどこに居る!
無双の三成君が聞いたら足蹴にされそうだ。

「私のことは呼び捨てで! あとそうやってひれ伏すのもやめて!」

「それはできません! 香耶様は私を秀吉様に推挙してくださった大恩ある御方ですので!」

「こんな汚れた大人を曇りのない眼で見上げるのはやめてー!」

どうも義理堅く妥協の出来ない性格らしい。




こうして豊臣秀吉さんと佐吉君をゲットし、大坂日帰り弾丸旅行は幕を閉じるのであった。

その後町から離れ人気のない山中で夜の炎を発動し、小田原の城下町にある自宅へと瞬間移動した際、佐吉君の私への尊敬度が振り切ったのは言うまでもない。

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