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沖田総司side
風間は刀を納めた。
香耶さんはそれをただじっと見つめていた。
「会合が終わると共に、俺の務めも終わっている」
言って風間は壊れかけた窓に手をかける。彼女の羽織っている浅葱にちらりと視線をよこして、
「新選組など抜けて俺の元に来い、香耶。人間は好かぬがお前は特別だ」
「待て!」
いずれ迎えに来る、と言い残して窓から飛び出し、深夜の三条通りに消えていった。
「………くそっ」
僕は舌打ちした。
見逃された。
自分に腹が立つ。奴に一矢も報いることができなかったばかりか、あまっさえ香耶さんを盾にして。
僕が刀をしまうと同時に、香耶さんが畳の上にばたんと倒れこんだ。
「香耶さん!? 香耶さんしっかりして!」
「疲れた……寝る。おねがい、総司君……朝餉は…取っておいて」
朝餉の心配!!?
僕の不安をよそに、彼女は言いたいことだけ言って、こと切れるように眠りに付いてしまった。
彼女の身体を診てみると、首の後ろに痣ができている。この分じゃ床柱にぶつけた首から背中はしばらく痛むだろうね。
腹当の紐を緩めて慎重に彼女を抱え上げたところで、階下から僕を呼ぶ仲間達の声が聞こえてきた。
「総司!」
「総司、無事かー!!」
「大声で叫ばなくても聞こえてますよ」
池田屋にいた浪士のゆうに半数は彼女が斬ったのだと僕が知るのは、もう少し経ってからだった。
※補足
香耶とちかげ君の出会い話『昔語り・風間千景』は「私と、愛刀、狂い桜」番外編 にあります
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