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沖田総司side



屯所への帰り道。

香耶さんはしきりに頬を気にしている。
顔についた血が乾いて不快なようだ。袖でごしごし擦ってもまだ気がすまなかったみたい。そのうち爪を立ててがりがりと掻き始めたところで、僕はその手を押しとどめた。

「ちょっと。そんなことしたら傷がつくでしょ」

「んむ……でも」

「屯所に着いたら洗わせてあげるから。ね?」

「…わかった」


口を尖らせて不快感をあらわにする様子は子供みたいで可愛い。
そう言えばこの人いくつなんだろ? 十年前も知らなかったけどさ。

十年前とここまで外見年齢変わらないとすごく気になる。化粧もしてないのに。肌も子供の肌みたいにぷりぷりしてるし。



「そういえば香耶、あんたは一体いくつなのだ?」

あ、訊いちゃったよ一君。一君も同じことが気になったんだろうね。気持ちは分かる。
でも案の定、香耶さんは聞かれたくない事を聞かれたといったていで目を泳がせた。


「私は………ハタチだ」

『ぶっ』

いやウソでしょそれは。逆算すれば僕より年下とかありえないと思うんだけど。ゼロ君噴き出したしさ。

その反応だとゼロ君は彼女の本当の歳も、歳をとらない訳も知ってるんだよね。それどころか、香耶さんの事なら僕よりも何でも知ってる。
長年一緒に旅してきたんならそんなこと当たり前だけど…なにこれ、おもしろくない。

けれど、もしも香耶さんに今日始めて会ったんだとしたら、十代って言われても信じるだろうね。


「…不躾だったな。すまない」

もう遅いよ。一君。

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