12
月神香耶side
あーあ、派手にやってるね。
白髪の化け物がこちらに一歩踏み出す間に、私は五間ほどある距離を一気に詰めた。
一人の白髪の鼻先にまで顔を近づけて
「化け物同士だ。遠慮はいらないね」
至極楽しげに言い“狂桜”を抜き放つ。
正面から一文字に一人目を斬り伏せ、それが血煙を上げるころには、私は二人目の奴の横から心臓を刺し貫いていた。
刀を振りかぶってくる三人目をあしらっていると、視界の隅で一人目が起き上がるのが見えた。
「不死か」
…一人目の奴の怪我が治っている。
二人目が起き上がらないところを見ても、心臓が弱点だと分かる。
これも血の呪いだね。私にかけられているものとは少し種類が違うけれど。
三人目の刀を巻揚げ足をかけた。そいつは浪士たちのスプラッターな遺体の上に倒れこむ。
後ろから復活した一人目が下段に構えて攻め込んでくるのを横に避けると、逆側からそいつの首をはねる者があった。
おや?
知っている者の気配ではないか。
闖入者は続けざまに立ち上がった三人目の心臓を刀で貫いた。
「「――!?」」
浅葱の羽織に黒い小袖の着流しの男と、後から来たこれも浅葱の羽織の背の高い男は、月明かりに照らし出された私の顔を見て目を見開いた。
ああ、やっぱりね。
彼らの正体を確信した私は、返り血のついた顔に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「惣次郎君に一君。二人とも大きくなったね」
「香耶………さん?」
「………香耶か!?」
成長した彼らがそろって息を呑むさまは、この上なく面白かった。
※補足
香耶と一君の出会い話『昔語り・斎藤一』は番外編 にあります。
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