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「影姫?」

ソファーに寝転がりながら赤の王、周防尊は怠そうに言った。

「うん。ほら、最近鎮目町で噂になってるでしょ?グローブつけた感覚操作のストレイン。俺が名付けたんだ!」

いいセンスしてるでしょ、と言わんばかりの顔でそう十束多々良が言った。
その話にこのバーHOMRAのマスター、草薙出雲が乗っかった。

「ああ、なんやいつの間にか視界が真っ暗になっとって、気い付いたらボコボコにされとったつうやつやな。なんや十束、本人に会ったんか。」
「ううん違うよ。ただちょっと現場に立ち会っただけだよ。」



*



数日後の8月1日鎮目町。

照はバーHOMRAを建物の陰からじっと見ていた。もう2時間にわたる。端から見たら不審人物である。わかってはいるが、あの人が入っていった店だ。もしかしたらあの人が出てくるんじゃないかと思ったら、いつの間にかこんなストーカー紛いのことをしていたのだ。大学に合格して上京した4月からだから、もう5ヶ月目に突入したりする。何をしてるんだと自分でも思ったが、止められなかった。あとグローブが蒸れて暑い。外したい。

「ねえ君、吠舞羅に何か用かな?」
「うわぁぁ!!?」

悶々と思考に耽っていたからか、背後からの声に過剰反応してしまった。



*



HOMRAから少し離れた公園のベンチに照は座った。

「君、この前駅前で絡まれてた子だよね。」
「……見てたんですか。」

1週間前、確かに照は不良に絡まれていた。大学も夏休みに入り、少し遠出してきた帰り、疲れてベンチに座ってるところを絡まれたのだ。
照は横の優男に警戒心と焦燥を抱いた。
見ていたなら助ければよかったのに、とちらっと思ったが、それ以上に撃退方法がばれていないかの方が照には重要だった。

「まあそんな警戒しないでよ。俺は十束多々良、君の名前は?
「……。」

ヘラヘラと笑う男に更に警戒を強めた。でも、目の前にいる男はどこか幼なじみに似ている気がする。何故だろうかと、その理由を考えていた照に十束は苦笑しながら、

「君ストレインでしょ?」

彼女にとっての爆弾発言をした。



ストレイン。王のなりそこない、はぐれ能力者、色々と呼び方はあるけれど、一般人から見てしまえばただの化け物だ。だけどそんなただの一般人が何故そんな言葉を知っている?コイツは何者だ?いやそんなことより、口封じする方が先か?いや視界操作して自分だけ認識できなくするだけで、いやそれは……。

照の脳内でたくさんの選択肢が浮かんで消える。混乱しているのが自分でもわかった。
落ち着け、まだとぼけてごまかすという平和的手段がある、よし、これでいこう。

「何のことです「俺見ちゃったんだよねー。君が不良に触った後、急にあいつらの様子がおかしくなってそいつらをボコボコにしてたの。それでそのあと、そいつらに話を聞くと、急に目の前が真っ暗になったらしい。」

触られた以外何もされてないのにだ。

「だから俺は君はストレインだと思ったんだ。」
「……短絡的すぎませんか。」
「あれ?ストレインって言葉知ってるんだ。一般人ならここは、それって何ですか?だよ」

(なんだろう、凄いムカつく。)

チッと心の中で舌打ちした。はめられた。もうごまかせないなとグローブを外し戦闘の構えをとる。

「……なら、あなたは一般人じゃないんですか。」
「うん。」
「……!?」

返された言葉に不意をつかれる。十束は手の平から炎を産み出した。

「ね?」
「……っあなた、何者?」
「俺は第三王権者、周防尊がクランズマン、十束多々良。君の名前は?」

差し出されたてをとりながら、

「……第7王権者三輪一言がクランズマン、天海照。」

照は名乗った。
何となくだけど幼なじみと似た雰囲気を感じた理由がわかったから。
だから、

(この人は大丈夫だ)

そう思えた。



20130316
20130807 修正