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無事受験も終わり、照は実家に帰ってきていた。
試験は集中して出来たし、ベストも尽くせた、と思う。
ソレでもやはり不安なものは不安で、気が付けば体はとある家に向かっていた。

「一言様、こんにちは。」
「いらっしゃい照。どうしたんだい?」
「いや、家でじっとしてられなくて……。」
「照!?」

トトトトと廊下を小走りする音が聞こえた。
見ると狗朗が目を輝かせてこちらへ来る。

(ヤバい。なんかものすごくかわいい。)

思わず抱きしめたくなる衝動に駆られるが必死で耐える。13歳の男子に抱き着いたら変態じゃないか。だが、コレだけで今までの疲れが大分吹っ飛んだ。

「ハイコレ。庭の畑で採れた野菜。おすそ分けです。」
「おや、ありがとうございます。」
「済まない。有り難く頂く……って違う!何故ここにいる!合格発表はどうした!?今日だろう!?大学に行かなくていいのか!?」
「行くわけないだろう。時間になったら端末で調べられるんだよ。ソレまでお邪魔させて。いいでしょう一言様?」
「もちろん。」

一言様の一声で狗朗は簡単に家に入れてくれた。ただ庭の掃除が条件だったが。
サッサッと竹箒で庭を掃いて行く。冬だから風が寒いが、無心になれた。

「ねえクロ。私、合格できるかな?」

一緒に掃除をしていた狗朗に、ふと尋ねた。

「大丈夫だ。照なら。」
「……ありがとう。」

考えたくないからここに来たのに。
回答欄間違えてないかとか、あの問題できてるかなとか、合格できるかなとか、……あの人のこととか。
考え出したら止まらない。

「照、もうすぐ時間じゃないか?」

時計を見れば、3分前だった。思考に耽るうちに時間が過ぎていたらしい。
端末を取り出し、ページ1ページ前を開く。1秒1秒がとても長く感じる。早く、来るな、止まれ、まだか、怖い、嫌だ、ヤメ「照、」

「時間だ。」

狗朗と目があった。大きくていつもまっすぐな目が私を射ぬく。大丈夫だ。指の振るえが止まった。1つ頷いて、私はページを開いた。




「それでは、照の合格を祝して、」
「「「乾杯ー!!」」」

天海家での祝勝会。一言様とクロも呼んできて、たくさんの赤飯が炊かれていた。これは落ちたときはどうなっていたのだろう。
ふぅ、と息を吐いた。落ちたときの想像をするなんて、合格できたからの余裕だなと苦笑した。



数時間後。
未だに続く居間での大人達の宴会を感じながら、少し疲れた私は縁側に座っていた。
夜風が冷たかったが、甘酒やら大人達の熱気やらでほてった体には気持ち良かった。

「照。」
「クロ。」

私の後ろに狗朗が立っていた。

「どうしたの?」
「……照は、ここから、出ていくのか?」

照はぽかんと口を開けた。

「まあ……そうなるね。都会での一人暮らし。これからはその用意だな。」
「……そうか。」

呟くように言う狗朗に、少しの違和感を感じた。庭に出て、狗朗を振り返る。月光の明るい庭と、暗い縁側が相まって、距離を感じた。

「……もしかして、寂しいのか?私がいなくなるから。」
「ああ。」

照は目を見開いた。
意外だった。茶化すように言ったのに素直に返されてしまった。驚いたと同時に、嬉しさと可愛らしさに頬が緩む。

「大丈夫だクロ!休みには帰ってくる!それよりも一言様のところで修行、しっかり頑張れよ!」
「……ああ!」

狗朗は笑ってくれた。よかったと照は思った。祝いの日にこんな湿った空気は似合わない。

「そんなに寂しいなら、明日から引っ越しの用意だから手伝いに来なよ。片付けと整理整頓は得意だろう?」
「ああ、行く。勿論行く。毎日行く!任せろ!」
「……クロくーん?」

それから狗朗は本当に毎日仕事を終らせてから、家に来るようになった。


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